夏の甲子園を目指した高校野球の地方大会が全国で開催されている。高校野球を見続ける筆者が、とある地方大会の一シーンを描く。

甲子園は遙か彼方

どこにでもある地方球場
どこにでもある地方球場
梅雨の晴れ間、川沿いのとある地方球場に高校野球の地方大会を見に行く。試合は一回戦。選手たちにとっては、ここから甲子園は遙か彼方にある。

球場に到着したのは、第一試合の終了直前だ。試合は延長10回の末、サヨナラゲーム。最後の瞬間のみ立ち会った者には白熱した好ゲームだったかどうかは知る由もないのだが、試合終了後の球場周辺には、そこかしこにドラマの緒が垣間見られた。

佇む野球部員、涙ぐむ女生徒、勝利チームの敗戦チームへの挨拶、勝ってほくほくの応援団、次試合に備える野球部員などが入り乱れるさまは、この時期全国どこでも繰り広げられている、よくある高校野球の光景の一つに過ぎないのだろう。

私は目の前の風景をただそのまま見て、そのまま書いている。毎年あらためて思うのは、その一つ一つが新鮮でエネルギーに満ちており、極端に劇的でなくとも登場人物やその周りの人々の心情や人間模様を観察するだけでも十分に面白いということだ。

弱小高校のエース

入場券700円也
入場券700円也
第二試合のスタンドに入る。対戦するのは仮にA高校とB高校としておこう。どちらのチームも私とは縁もゆかりもない。新聞で軽く見た情報によれば、A高校は昨年大会でようやく久しぶりの1勝を挙げたという、初戦敗退が普通のチーム。対するB高校は、過去に甲子園出場経験があるが、最近は地区中位レベルのチーム。それでも新聞のコメントには「甲子園を目指す」と載っていた。まずB高校が勝つのは間違いないだろうとは思ったが、今日の個人的な注目を『A高校がどう負けるか』に置いてみた。

B高校側、一塁スタンドは、すでに応援団がいっぱいだ。三塁側スタンドに行く。ブルペンでA高校のピッチャーが投球練習をしている。おそらく彼がエースなのだろう。全然速くないストレートと、全然曲がらないカーブが低めによくコントロールされている。落ち着きのあるクレバーなピッチャーだ。彼が崩れずにどこまで辛抱できるかが「この試合」だろうと思った。

【試合開始】→