「日本を代表する好投手」と言われる西武ライオンズの松坂大輔。しかし6/7現在、防御率2.13も4勝7敗と負け数が大きく先行。「好投の割に勝てない」松坂大輔の摩訶不思議に迫る。
好投しても競り合いに勝てない
松坂の好投は光るが、なかなか勝てない…。その原因は果たして? |
この「勝敗逆転」の原因を突き詰めると、6/7現在で28勝33敗と負け越している西武ライオンズの打線にあるように思えるが、事は決して単純ではない。例えば昨年のアテネオリンピック準決勝で、松坂大輔がオーストラリア打線を1点に抑えるも日本代表が完封された試合に代表されるように、「好投しても競り合いに勝てない松坂」の印象も強い。この理由は一体何なのか?
松坂の2005シーズン成績
6/7現在、松坂大輔の成績は以下である。12試合先発登板、うち9完投、投球回数が97回。失点29・自責点23の防御率2.13。奪三振は106とイニング数以上で、与四死球は29と、9イニング平均3個に満たない。これだけ見ればチームのエースとして文句のつけようのない数字である。しかし、4勝7敗と勝てない。
打線の援護は?
では、松坂登板試合に西武打線は全く援護できなかったのだろうか。それも一概にはそうと言えないのだ。松坂が投げている97イニングの間、松坂は29失点しているが、打線は40得点を挙げている。9イニング換算では援護点は3.71となり、全試合の平均得点(4点強)よりは若干少ないが、さほどの遜色があるわけではない。
「投手戦」の落とし穴
しかし、負けた試合に限ってみれば、打線は確かに点を取れていないのである。7敗の試合で松坂登板の間に打線が挙げた得点は、順に3、1、0、4、2、1、1である。7敗の間の55イニングで12得点と、9イニング換算では2点に満たない。逆に4勝のうち2つはそれぞれ10得点・8得点と楽勝のゲームであり、これらを「馴らせば」、先の援護点9イニング平均3.71という数字ができあがるのだ。
結局、松坂はいわゆる「投手戦」でよく負けているということであり、この原因は数字的に見れば、投手戦の際に味方打線が点を取れないということである。
相手投手の好投を引き出す?
松坂のこの現象を、筆者は数年来興味深く追ってきた。ではなぜ、松坂が投げると投手戦が形成されやすいのか。その答えははっきりとはわからない。松坂は開幕投手であり西武のエースであるので、他チームエースとの対決が多いのかという仮説も考えられたが、決してそうとも言い切れない。
筆者の仮説としては、松坂の対決相手が「格落ち」であっても、その投手をリズムに乗せ、好投を引き出してしまう作用があるのではと考えている。今シーズンで言えば、4/15オリックス戦のJP(1対2)、5/11阪神戦の杉山(2対3)、6/7ヤクルト戦のガトームソン(3対7)などが挙げられる。
もちろん、アテネ五輪準決勝のオーストラリア代表、オクスプリング(0対1)もこの例にあてはまるだろう。
有効な対策は?
「松坂が好投しても負ける」事実に対して、松坂自身の対策を考えるのは難しい。今シーズン松坂が大崩れした試合はなく、全試合少なくとも6イニング以上を投げ、12試合中9完投である。
それゆえ、「好調でも勝てるとは限らない」「不調でも勝てない」ゆえに勝ち星を伸ばせない松坂登板試合にどう勝っていくかが、現状Bクラスに低迷する西武浮上のカギを握っていると思われる。松坂の「好投」は事実なだけに、西武ベンチは打線・相手投手を含めたさらに細かい分析が必要だろう。
※松坂投手のテクニカルな分析は、『野球毎日』2004/10/10を参照してください。
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