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プロ野球IT活用の実情と可能性を探る 「プロ野球のIT活用を考える」(3ページ目)

IT企業の日本プロ野球新規参入によって、野球での「IT活用期待」が高まっている。本記事では、MLB等でのIT導入事例を紹介し、日本プロ野球でのIT化の実現性や問題点を提起する。

執筆者:コモエスタ 坂本

日本プロ野球IT化の問題点

以上でわかるように、日本のプロ野球界はアメリカと比較すれば、リーグ全体でサイトを統括するようなスケールメリットを生かしたIT運営がなされていない。これらが実現できれば、収益性という意味でもリーグ・球団に寄与できるのだが、その機会をみすみす逸失していると言えるだろう。

その大きな理由は、やはり日本プロ野球の組織問題に還元される。プロ野球コミッショナーは天下りのお飾りで、各球団のオーナー連合による会議(オーナー会議)が事実上の最高決議機関であるという仕組みを改めなければ、リーグ全体で足並みを揃えたサイト運営などは不可能に近いだろう。

さらに球界運営においては、放映権等の分配問題に象徴されるように、各球団共存の体制ができてはおらず、例えば運営コストのかかるストリーミング放送を実施するにせよ、権利関係をクリアするだけでも相当な面倒なことになるだろう。

IT企業は何をできるのか

新規参入を果たしたIT企業は、野球のIT化をどのように進めるだろうか。巷間伝えられているストリーミング配信も、一球団による運営ではコスト高になることが目に見えている。技術的にもストリーミング放送はサーバー負荷が高く、接続数に比例して設備増強を図らなければならず、相当数のユーザーを確保しない限り、採算性はあまりいいとは言えないだろう。また、自球団主催ゲームのみを放送するのだろうが、全国ネットやCS放送などとバッティングする場合はどうするか、などの問題もある。

グッズなどの物販自体は、楽天などのシステムをそのまま援用することで問題がないだろうが、記録データベース・記事配信などは既存の方式を継承せざるを得ないだろう。野球ポータルサイトを形成するのは、提供会社との提携が必要になる。

理想論を述べれば、日本プロ野球全体でのシステム統合への道筋をつけるためには、一社がモデルとなるシステムを構築することが望ましい。球団独自の運営では全体のスケールメリットを享受できず、採算性も落ちるのだが、それでも持ち出し覚悟でのモデル構築・運営をし、球界全体に向けてIT化の雛型を提示しないことには何も変わっていかないかもしれない。

ITでさらにできること

繰り返し書くが、日本プロ野球をIT化することによって、リーグ・球団側とユーザー双方に最も互恵的になるための大前提は、統括組織による一括運営である。もしそれが可能になれば、先に挙げた5つのスキームを越えて実現できることはさらに増えるだろう。

例えば、映像配信・物販・会員登録などによる総合的なマーケティングも可能であり、効果的な宣伝や商品提供ができるようになる。また、統括組織に通信社を設け、記事配信による収益を得ることも可能だろう。

大がかりなシステム化を考えれば、JRや映画館などでは実現できている、空席案内や座席予約・発券システムなども可能だろう。また、球場内設備という問題はあるが、ICカードや携帯端末等を用いた、ポイント制による場内外の物販システムの連繋なども考えられるだろう。

これらのITによるアイディア、テクニカルには特別新しいものはなく、既存技術の応用で可能だ。日本プロ野球のIT化が、コスト面と権利面で問題を抱えているのは、やはり球界構造という組織論的な部分に依拠するのである。これらを含めて、球界再編問題は本当の意味でのリストラ・合理化を考えていくべきであろう。


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