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プロ野球IT活用の実情と可能性を探る 「プロ野球のIT活用を考える」(2ページ目)

IT企業の日本プロ野球新規参入によって、野球での「IT活用期待」が高まっている。本記事では、MLB等でのIT導入事例を紹介し、日本プロ野球でのIT化の実現性や問題点を提起する。

執筆者:コモエスタ 坂本

メジャーリーグに見るIT化の実情

日本プロ野球のIT化と、アメリカのMLB(メジャーリーグ)やNFL(アメリカンフットボール)のそれを比較すると、一番の大きな差異は、後者がリーグ全体で一括したIT化を展開しており、一つの巨大スポーツポータルサイトを形成していることだろう。

これは主催団体(コミッショナー)がリーグ全チームのIT化等の権利を掌握して、リーグの公式サイトを運営会社に委託しているからである。例えばMLBならば米MLB Advanced Media(MLBAM)が米Sun Microsystemsの技術支援を得て、mlb.comというポータルサイトを運営しているという仕組みだ。ピーク時のPV(ページビュー)は1日数千万にも達する。

mlb.com
mlb.comのトップページ
MLB公式ページの内容をざっと見てみよう。まずはトップページから。シーズン中には、注目試合の結果記事などが目を引く。そして「scoreboard」では、各試合の結果速報が並ぶ。そして映像配信であるMLB.TVの宣伝が。MLB.TVでは、全国三大ネットでTV中継されない注目試合が放映され、月額3ドル95セントだ。

トップページに設置されているリンクも多様だ。試合速報・順位表・選手成績・スケジュールなどのデータを参照できるのはもちろん、ニュースページや各球団ごとのホームページ、マイナー情報ページ、ショップ等への移動が簡単にできる。 もし試合中であれば、多くのファンは無料で以下のようなページ回遊をすることができる……『GameDay』でシアトル・マリナーズの試合経過を眺める。イチローの最近の成績、相手ピッチャーの成績が表示されている。この選手はどういう選手か。歴年成績やバイオグラフィーをワン・クリックで確認。ゲームセット。マリナーズのホームページに行って記事を読み、試合を振り返る。さらにはショップに行き、グッズを購入する。これらの巡回行動が、わかりやすく1~2クリックで実現できているのが現在の公式ページだ。

日本プロ野球IT化の現状

メジャーリーグの統括的なIT運営に対して、日本の現状は寂しい。プロ野球機構・各球団・各ポータルがそれぞれの機能を分立させており、ユーザーの視点から見れば不便この上ないのだ。日本プロ野球IT化の現状を各スキーム毎に見てみよう。

■1 映像配信
以前、NHKが無料で高校野球のストリーミング放送実験を行ったことがあるが、日本プロ野球に関しては現状映像配信は行われておらず、音声放送もない。代わりに各球団・各ポータルでは、文字またはアニメーションによるリアルタイム中継を行っている。

■2 記録データベース
NPB(日本プロ野球機構)が以前からIBMと組んでBISというシステムを運用している。各ポータルや各球団ページで参照できる個人記録は、このIBM-BISのデータ提供を元にした独自集計が主である。

■3 記事配信
各球団のホームページで独自のトピックスを出したりしているが、記事は主に新聞社・スポーツ新聞社・通信社の配信によって成立している。

■4 オンライン・ショッピング
各球団のホームページで取り扱っているが、その方式やインターフェースは様々である。

■5 コミュニティ・プラットフォーム
これも各球団のサイトに委ねられるが、コアなファンはむしろ外部の掲示板を使用して応援するスタイルの方が主流になっている。

【日本プロ野球IT化の問題点】に続く→
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