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2002年ワールドカップ・カメルーンキャンプ地 中津江村レポ(2ページ目)

ある意味、2002年ワールドカップで最も話題になった事かもしれない「中津江村騒動」。あれから2年近く経った村の様子を大分県出身のライター江藤高志氏がレポートしてくれました。

執筆者:小野寺 俊明

中津江村の人口は1300人足らず。そんな村から450人もの村民が10台のバスを連ねてビッグアイを目指したのである。もちろんそれだけの村民が同時に移動するのは村始まって以来の出来事で、カメルーン代表がキャンプに来なければありえなかったことだった。多くの人が観戦を希望する中、長谷さん(写真)には切実な心配事があった。

「ばーさんたち、死ぬんじゃないかと。80歳を越えて、夜も遅いし4万人の観衆の中に連れて行って死ぬんじゃないかと。冥土の土産にはいいかもしれないけど(笑)、本当に心配しましたね。それと、村の留守宅に泥棒が入るんじゃないかという心配もありました。終わってみれば事故はまったくなかったですけどね」

お年寄りの皆さんのこの試合にかける情熱はすさまじく、整骨院へ腰の治療に通うおばあちゃんを説得しようとした先生が断念したということもあったという。そんな思い出話をする長谷さんも、70半ば過ぎの母親に行かないよう説得を試みたらしいが「臨終のときになって『あの時見られんかった』って言われても困る。そこまで行きたいなら死んでも本望だろう」と連れて行くことにしたという。

バスの乗降場からスタジアムまでは1~2kmほど歩かなければならなく、決してお年寄りにやさしいスタジアムではない。それでも結果的に、試合中にはジェレミ選手がコーナーキックの場面でスタンドの声援に手を振り、試合後には選手たちが挨拶に来るなど試合を楽しむ以上の感動を村民に与えたという。

「本当に楽しかったです」と長谷さんは笑った。

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