日本でも活躍した“ピクシー”ことストイコビッチが出場したユーゴスラヴィアは、2006年ドイツ大会ではセルビア・モンテネグロとして出場する。しかし、この名前でW杯に参加するのは、これが最後になるだろう。

2つの共和国の国家連合

98年フランスW杯では当時名古屋に在籍していたストイコビッチがユーゴのキャプテンを務めた(©Yuzuru)
“南スラヴ人の土地”を意味するユーゴスラヴィアは1929年、王国として誕生し、第2次世界大戦後は共和制になった。その後、他の東欧諸国と同様に社会主義の道を歩んだが、1991年に解体。それぞれ、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、マケドニアが独立し、2003年まではユーゴスラヴィアの名を継承しセルビアとモンテネグロの両共和国が新ユーゴ連邦を樹立。2003年に、国家連合としてセルビア・モンテネグロ共和国と名前を変えた。

首都ベオグラードにある、名古屋グランパスで活躍したドラガン・ストイコビッチが会長を務めるツルヴェナ・ズヴェズダ(レッド・スター)は、かつてトヨタカップを制した強豪クラブ。代表は、ユーゴ時代から青いユニフォームで「Plavi(プラーヴィ)」と呼ばれている。

セルビア・モンテネグロという国名で初のW杯を目指した代表は、欧州予選を6勝4分け、失点わずか1という好成績でスペインや旧同胞のボスニア・ヘルツェゴヴィナを退け、本大会への切符を手にした。

ドイツではアルゼンチン、オランダ、コートジボワールと“死のグループ”Cで決勝トーナメント進出を目指して争う。

W杯直前、モンテネグロの独立が決定した!

04年キリン杯にはセルビア・モンテネグロ代表として参加した(©Yuzuru)
そのセルビア・モンテネグロ代表にW杯直前、衝撃のニュースが走る。5月21日、独立の是非をめぐって行われた住民投票で賛成票が55.4%とEUが定めた有効投票数の55%の条件を上回り、モンテネグロの独立が承認された。これにより、セルビア、モンテネグロ両共和国の国家連合は解消され、かつて6共和国で構成された旧ユーゴスラヴィアは完全に解体。国家連合の継承国は連合の規定に基づき、セルビアとなる。

今回のW杯はセルビア・モンテネグロとして予選を戦ってきたため、このまま出場するが、これによりセルビア・モンテネグロという国家がW杯に出場するのは、これが最後となるだろう。

セルビア・モンテネグロの人口はセルビア人が約750万人、モンテネグロ人が約60万とモンテネグロ人が圧倒的少数派であった。そのため、かつてACミランでも活躍したモンテネグロ・サッカー協会会長のデヤン・サヴィチェビッチも独立賛成派で、独立推進派のキャンペーンに積極的に参加。独立承認がされなければ、サッカー協会会長職を辞すと語っていたこともあり、独立は時間の問題だといわれていた。だが、選手やスタッフにとっては非常にタイミングが悪かったにちがいない。

現代表にモンテネグロ人はただ1人……

混乱の「Plavi」はW杯で好成績を残せるか……(©Yuzuru)
今大会でキャプテンを務めるサヴォ・ミロシェヴィッチは、「モンテネグロの国民にお祝いを言いたいが、僕は独立には賛成していなかったから、今はそれはできない。もちろん、彼らの幸運は願うが、祝辞は送らない。僕達はドイツで、僕達を自分の代表だと思う人たちのためにプレイする」と語った。だが、他の選手たちはW杯に集中するためか、特にコメントを出していない。

事実、代表メンバーは、当初招集されていたミルコ・ヴチニッチがU-21の試合で怪我を悪化させたためW杯出場を断念し、モンテネグロ人はGKのイェヴリッチ1人となってしまった。

5月27日のテストマッチ、W杯壮行試合であるベオグラードでのウルグアイ戦では両国の国歌の演奏がなく、代わりにFIFAアンセムが流れた。もともと旧ユーゴから継承された国歌「Hej Sloveni(スラヴの人たちよ)」は旧ユーゴの象徴するものとして、ただでさえ観客からブーイングの対象となっていたが、セルビアとモンテネグロの解体が決まった今となっては更にブーイングを浴びるおそれがあったからだと思われる。また、W杯でも国家が演奏されないのではないかと報じるメディアさえある。

現在のFIFAやUEFAの加盟についてはセルビアがそのまま引き継ぎ、2008年のユーロの予選はセルビアが参加をする。「Plavi」の青いユニフォームも、セルビアが着ることになるはずだ。

混乱の中、「Plavi」のセルビア・モンテネグロとしての最初で最後のW杯の挑戦が始まる。独立を支持したモンテネグロ人は、代表チームを応援するのだろうか。それとも……。

協力:YU YU FOOTBALL MANIA

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