フライフィッシングの醍醐味「タイイング」とは?
タイイング。フライフィッシングの世界ではフライ(毛針)を自分で作ることをそう呼んでいる。やっぱり、市販のフライを使うよりも、自分で作ったフライで釣ったほうがうれしいし、何よりも食いついてくれた魚に感謝したくなってくるから不思議だ。ガイドがこれまで書いてきた記事で紹介したフライたちも実は自分で作ったもので、実際に釣りをするときにも使っている。名手たちと比べれば、自分のフライはまだまだだと思うけど、それでもひととおりのパターン(フライの種類)は巻くことはできる。そして、完成したフライを見ていると、そのときだけは「必ず釣れる」と思えてくるから面白い。みなさんにも、この楽しさをぜひ味わってほしい。
タイイングに必要な道具「バイス」の種類は?
- バイス
- オーソドックスなバイス
- リーガルタイプのバイス
- ロータリーバイス
タイイングに入るまえに、まずは必要な道具を集めてみたいと思う。まず、タイイングでもっとも大切な「バイス」について解説しよう。バイスはフライフックを挟んで固定するための器具で、これの使い勝手によってタイイングの好き嫌いがはっきりしてしまうナーバスなアイテムだ。様々なタイプがあり、それぞれに特長がある。オーソドックスなバイス、ロータリーシステムを持つバイス、バネを利用したバイス、などなど、様々な種類、大きさ、システムの複雑さなどにより幅広いタイプが存在している。最初は好みも何もないと思うけど、ガイドが薦めたいのはオーソドックスタイプ。場所もとらないし、一定額を以上の製品なら精度の高いものが市場に多く出回っているから外れが少ないのだ。
お金の話をもう少ししておくと、バイスは一回買ったら基本的に一生使えるもの。ジョー(フックを挟み込む部分)は交換しなければならなくなるが、それは数千円程度の出費だし、そこまで使い込むには何千本ものフライを巻かなければならない。精度が高いと小さいフックでミッジを巻くときに違いが出てくる。しっかりフックを挟めれば作業効率も高いのだ。バイスの出来でタイイングの上達が早まるのだから、あまり出し惜しみせず、最低でも1万円以上の製品を購入してほしい。
もし、大量に巻けるようになったら、ロータリーバイスもオススメ。両面を均一に作るのに最適で特にウェットフライを巻くときなどは大変重宝する。弱点は全体的に大きい点と、高額な製品が多いところだ。ガイドはロータリバイスの中でも、小型のタイプを愛用していて、普段巻くときはもっぱらこのアイテムを使っている。ちなみにバネの力でフックを挟むリーガルタイプもあるが、これのメリットは大型フックでも小型フックでもまんべんなく挟めるところ。
ただし、全体的に大きくなってしまうことと、フック交換のたびに力が必要になることだ。非力な人には若干きついかな、と思う程度だが、気になる人も多いはず。いずれにしてもバイスはそうそう頻繁に買い換えることがない道具だ。ショップでじかに触らせてもらって、許しがもらえればフックの挟み心地や精度もチェックしておきたい。ちなみに、フックを一旦挟んだら、アイの部分を指先で引っ張ってみよう。ピンピン、と弾けるような音がしてフックがずれるようなことがなければ合格だ。できれば8番あたりから24番ぐらいのフックまで挟んでみるとよいだろう。
タイイングに必要な道具「スレッド」など
次に必要になるのは「スレッド(フライを巻きとめる糸)」と、それを上手に使うための「ボビンホルダー」だ。スレッドには太さがあって、最初は6/0と8/0があれば大丈夫。種類はユニスレッドとモノスレッドの2種類があるが、こちらも最初はユニスレッドを選択しておこう。カラーは無限にあるので最初は選びづらいと思うが、とりあえずブラウン、オリーブグリーン、タン系とホワイト、ブラック、レッドを用意しておこう。ボビンホルダーは、もう好みしかない。何個か持っているとスレッドカラーを交換するときにいちいちボビンホルダーにセットしなおす作業をせずに済むので、予算に合わせて2、3個買っておこう。あとは上手くなったらいろいろなタイプを試せばオッケーだ。それとボビンホルダーにセットしたスレッドを穴に通す「ボビンスレッダー」も併せて購入しておこう。
スレッドを切る、あるいはハックルや羽などをカットするのに必要な「シザース」は必ず良く切れるものを用意しよう。大きさや形状によって好みがあると思うが、自分の指にぴったりくる製品を選ぶこと。後々分かると思うが、とんでもなく細かい部分をカットすることもあるので先はなるべく尖ったタイプがオススメ。また、金属のマテリアルをカットする場合もあるので、スレッドと柔らかいマテリアル用のものと、金属用の二つを揃えておいてもオーケーだ。もちろん、ひとつだけ購入して最初は柔らかいものと金属両方をカットするのに使って、切れなくなったら金属専用にして、良く切れるシザースを新しく買う、なんていう方法もある。
フライを巻き終わったあとにスレッドを結んでフィニッシュするためのフィニッシャーも必要だ。専門用語で説明しておくとハーフヒッチを行う「ハーフヒッチャー」としっかりヒッチを行うための「ウィップフィニッシャー」の2種類が必要。最初は使い方が難しいと思うが、次回しっかりと解説したいと思うので、とりあえずはお店にいってこの二つを購入しておこう。タイプは様々あるが、画像にあるのがオススメなので、形状をしっかり覚えておいてほしい。
それと小物類として用意しておきたいのはハックルをフックに巻き、フレアさせるときに使う「ハックルプライヤー」、獣毛などの毛先を揃えるための「スタッカー」、そして様々な用途に使うことになる「ニードル」、フィニッシュが終わった後、しっかり固定するために使う「ヘッドセメント」、ボディー材をスレッドにまとめやすくする「スレッドワックス」などだ。そのほかの必要になる小物類やあると便利なグッズについては実際にフライを巻くときに解説したいと思う。
とりあえず、これだけあれば一通りのフライは作れるようになるはずだ。総額にすると2~3万円とそこそこ高額になってしまうと思うが、一生使えるグッズなのでぜひ揃えておいてほしい。
タイイングのマテリアルについて
マテリアルはケースにまとめて保管しておく。これはガイドが事務所でこっそり巻くためのケース。ご覧のようにガイドは決してマメでも器用でもないがフライは作れるのだ。みなさんもこれを見て勇気を持ってほしい(笑)。
また、ハックル用の素材でも先ほど述べたコックネックのほか、サドル(フライ用に飼育された鳥の尾の周辺)も使われる。また、ボディー材をみてもドライフライ用の化学繊維、ニンフに使われるウサギの毛など、こちらも多種多様だ。マテリアルについては、ひとつづつ解説するしかないので、実際にフライの巻き方を説明するときに少しずつ紹介していこう。
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