見る者の想像力に訴えかける概念によるアート
- 「グレープフルーツ 」
Grapefruit: A Book of Instructions and Drawings |
読みおえたら。
有名なこの言葉で締めくくられる著書「グレープフルーツ」は、「想像してごらんなさい」「一週間笑い続けなさい」など、言葉による指示(インストラクション)が書かれています。いわば、鑑賞者が作品に参加することにより成立するこのようなスタイルの作品はインストラクション・アートと呼ばれています。
この作品をはじめ、コンセプチュアル・アートの先駆けであるフルクサスに参加しながら、彼女は数々の作品を発表しました。コンセプチュアル・アートを日本語にするとそれは概念芸術といいますが、彼女の作品は自分だけに語りかけるのではなく、見る者の想像力、観念へと自ずと働きかけるまさに概念の芸術と言えるでしょう。やわらかな想像力に溢れる初期の代表作であるこの作品は改編され、「グレープフルーツ・ジュース」として文庫本でも出版されています。
なお、レノンはこの作品に触発されてビードルズの名曲「イマジン」を作ったといわれています。その一方、オノの活動に共感したレノンは、彼女と多くの共同制作をともにするようになり、彼女はこのことによりビートルズを解散させた女とも言われてしまいます。
そもそもレノンとオノの接近は彼女の展覧会がきっかけでした。2003年に日本国内5会場で開催された回顧展「YES オノ・ヨーコ」の展覧会タイトル"YES"は、1966年、ロンドンのギャラリーで展示された「天井の絵/イエス・ペインティング」に由来するものなのですが、これがオノとレノンが出会ったきっかけの作品です。鑑賞者は梯子に上り、天井に描かれた文字を、虫眼鏡を使って読むのですが、レノンは描かれた文字がうんざりするような否定的な言葉ではなく、すべてを肯定するような"YES"という文字が描かれていてほっとしたといい、彼女の作品を気に入ります。この展覧会での出会いがきっかけになり、徐々にふたりの距離が近づいていったと言われています。
次のページでは、平和活動家としての一面もつオノとレノンの作品をご紹介します。