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里山の美術展「大地の芸術祭」レポート(3ページ目)

緑豊かな新潟県の越後妻有地域全てが現代アートの舞台となる大注目のイベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」ガイドによるレポート記事。

執筆者:橋本 誠

ガイドおすすめの作品(十日町・川西)

たくさんの見所がある「大地の芸術祭」。私は3日間車で駆け回り、約半数にあたる150ほどの作品を見ることができました。その中から地域別におすすめの作品(2006年の新作)をご紹介します。

うぶすなの家
「うぶすなの家」
かまどや洗面台などもやきものでつくられた「うぶすなの家」。8人の陶芸家の作品が展示されている
おにぎり
1階のレストランでは地元住民の方々による食事がふるまわれている
まずは首都圏から「大地の芸術祭」を訪れる際の入り口となる十日町地区と、隣接する川西地区。

「うぶすなの家」は空家プロジェクトのひとつで、8人の陶芸家の作品が展示されています。縄文時代に火焔型土器を生み出した越後妻有に、再びやきもの文化を取り戻そうとする動きのひとつで、かまどや囲炉、風呂、洗面台などがやきものを使って作られていました。

1階にはレストランもつくられ、8人がつくった器で地元住民の方々が開発した料理を楽しむことができます。おにぎりにもお吸い物や山菜のお浸しや漬物が添えられ、私もおいしくいただいてきました。連日盛況だそうなので、お食事をしたい方はお昼の早い時間帯までに訪ねることをおすすめします。

名ヶ山写真館1階
倉谷拓朴《名ヶ山写真館》
Photo (C)Kenji Yamakita
1階は古道具を利用した枯山水のインスタレーションが展開されていた
倉谷拓朴《名ヶ山写真館》も空家プロジェクトのひとつ。1階はおそらくこの家にあったであろう古道具を利用した枯山水のインスタレーション、2階は集落の人々などから集めた写真などの展示、3階は動物のオブジェや映像を利用したインスタレーションと、各階が異なる雰囲気で見ごたえがありました。

また、先のページでもご紹介しました菊池歩《こころの花》もおすすめ。この作品は《名ヶ山写真館》のすぐ近くにあります。

ガイドおすすめの作品(松代・松之山)

美しい棚田が広がる松代と、温泉地として有名な松之山は越後妻有でも特に特徴ある地域です。

最後の教室
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン《最後の教室》
暗闇に無数の電球が揺れる元体育館
最後の教室
校舎の長い廊下。突き当たりから怪しい光が漏れる
Photo (C)Kenji Yamakita
クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン《最後の教室》は、廃校全体を使って制作されたインスタレーション作品。入り口となる体育館には藁が敷きつめられ、無数の電球が扇風機の風に揺れていました。

暗い体育館の中で漂う電球は「死」を連想させ少し怖い印象もありましたが、ほのかな藁のにおいを感じ、柔らかい光を眺めるうちにどこか懐かしい気分にさせられました。

校舎の廊下や教室でも「死」を感じさせるインスタレーションが展開されていましたが不思議と怖い印象はなく、むしろ逆に「生」へと向かうエネルギーを静かに与えてくれる作品だったと思います。

丸山純子《無音花畑》
丸山純子《無音花畑》
Photo (C)Kenji Yamakita
スーパーのビニール袋でつくられた花畑が家の中に出現
丸山純子《無音花畑》は、スーパーのビニール袋でつくった花を家の中一面に咲かせた作品。ひとつひとつの花が異なる柄や色をしており、豊かな表情をつくり出しています。集落で昨年が最後となったという味噌づくりの場に最後の華を添えていました。

その他にも、田を拓くために様々に流れを変えてきた川の歴史を無数の黄色いポールや横断幕で示した磯辺行久《農舞楽回廊》、陶のブロック2000個を並べ、棚田の風景と調和させた杉浦康益《風のスクリーン》、先のページでもご紹介しました日本大学芸術学部彫刻コース有志「脱皮する家」古巻和芳+夜間工房「繭の家」などはおすすめです。

最後のページでは、津南・中里地区のおすすめ作品をご紹介します。
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