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里山でアートを体感!大地の芸術祭事前特集(2ページ目)

2006年夏、3回目を迎える「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。緑豊かな新潟県の越後妻有地域全てが現代アートの舞台となる3年に一度の祭典です。世界中より注目を浴びる芸術祭を事前特集!

執筆者:橋本 誠

地域との対話を続ける、多数の恒久設置作品

「大地の芸術祭」で展示される作品の多くは、各地域に根ざしたテーマを表現していたり、周囲に広がる自然など設置される環境や空間を取り入れています。

会期が終了しても恒久設置作品として残されるものも多く、過去2回で制作された作品のうち、130点は今回も見ることができます。このページでは、その中からおすすめのアート作品をご紹介します。

《棚田》
イリヤ&エミリア・カバコフ《棚田》
詩が吊られたフレームを通して、人々の姿をかたどった彫刻が設置された棚田の風景を1枚の絵として楽しむ作品
《グリーン ヴィラ》
たほりつこ《グリーン ヴィラ》
丘陵地に象形文字を刻印した地上絵の作品
《土の音》
渡辺泰幸《土の音》
地域の住民と共に制作された、音の出る土器の作品

Photo(C)S.ANZAI
《棚田》(イリヤ&エミリア・カバコフ)は、農作業をする人々の姿をかたどった彫刻が設置された棚田の風景を、伝統的な稲作の情景を詠んだ詩が吊られたフレームを通して1枚の絵として楽しむ作品です。

この様に、作品が置かれた風景を生かした作品は多いのですが、《柵田》はその風景、その土地に流れてきた見えない「時間」やそこで生活してきた「人」の存在までもが詩を通して想像されるすばらしい作品のひとつです。

《グリーン ヴィラ》(たほりつこ)は、5つの言葉、「火」「水」「農」「藝」「天神」の象形文字を地下には縄文遺跡が散逸している丘陵地に刻印した地上絵です。

歴史的に強度を持つ場所で地上絵という宇宙へ向けられたランドスケープそのものをつくり出しているこの作品はダイナミック!自然に比べれば小さな人間の存在ですが、その人間が確かな知識と技術をもって創り出すことができるものに対する可能性も感じることのできる作品です。

《土の音》(渡辺泰幸)は、作家が地域の住民と共に制作した、音の出る土器(サウンドオブジェ)です。様々な形や模様をしたオブジェは、その数だけの音色があります。

この作品のように、作家がひとりで制作をするのではなく、いろいろな人たちと共同制作をすることで、多様性やコミュニケーションを取り入れているものも多いのです。中には観客が参加することで成立する作品もありますので、そのような作品にはぜひとも積極的な参加をしていただきたいと思います。

作品のための作品、宿泊可能な作品も

ただの彫刻やインスタレーション、プロジェクト型の作品だけではなく、少し変わった形態の作品もあります。

《ドラゴン現代美術館》
蔡國強《ドラゴン現代美術館》
作品として制作された登り窯は、内部が小さな「美術館」としても使われる
まつだい雪国農耕文化村センター
MVRDV「まつだい雪国農耕文化村センター農舞台」
変わった形をした建物はレストランやショップを備え、展覧会やイベントも開催可能
《夢の家》
マリーナ・アブラモヴィッチ《夢の家》
民家を改装した夢を見るための家は、なんと宿泊可能!
《ドラゴン現代美術館》(蔡國強)は、第1回展に作品として出品された登り窯です。この登り窯を小さな「美術館」として使うコンセプトの元に、第2回展では<キキ・スミス展>が立派に開催されました。内部は思いのほか広く、展示会場としては他で見ることのできない独特の空間が広がります。

今回は、宮永甲太郎が実際に窯としてこの美術館を使用し、焼成した作品を展示します。

「まつだい雪国農耕文化村センター農舞台」は、各地域に文化拠点をつくる「ステージ事業」のひとつとして、オランダの建築家グループ「MVRDV」によって設計され、第2回展開催時に松代地区にオープンした施設です。

4本の足に持ち上げられた様な変わった形をしていますが、四方が開放された1階部分には様々な舞台装置が仕込まれており、イベント会場としても使われています。

館内は地域のスローフードを提供するレストラン、オリジナルグッズを中心としたショップ、企画展会場に使用されるギャラリー、部屋自体が作品としてつくられた学習教室などから構成されていますが、各部屋がアーティストとのコラボレーションによって魅力あふれる空間に仕上がっています。

他のステージ事業の施設としては、「十日町ステージ越後妻有交流館 キナーレ」(十日町)、「越後松之山「森の学校」キョロロ」(松之山)があります。

そして極めつけはなんと、泊まることのできる作品です!《夢の家》(マリーナ・アブラモヴィッチ)は民家を改装した作品。

見学だけをすることも可能ですが、この家は夢を見るためにデザインされていて、宿泊者は赤・青・紫・緑の中から1部屋を選び、特製の服を着て板敷きのベッドで眠ります。見た夢を「夢の本」に綴り、宿泊者によって書き継がれた夢が作品の一部になっていくのです。

その他に泊まることのできる作品としては、《光の館》(ジェームズ・タレル)などがあります。

どちらも人気の作品なので宿泊の予約を取るのは大変ですが、見学するだけでも気分を味わうことができるかもしれません。

次のページでは、2006年の見どころと注目の作品をご紹介!
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