漫画そのものを描いたリキテンスタイン
ウォーホルと並んで、同時代に活躍したのがロイ・リキテンスタインです。リキテンスタインは漫画とその表現に注目し、漫画そのものを描きました。特徴的なのは、漫画の印刷に現れる網点(色を表現するドット模様)も拡大して描き、印刷の3原色である赤・青・黄色と太くて黒い線が強調されたことです。
ポスター販売サイト「ミュージック・バイ・アート」で扱われている、リキテンスタインの作品紹介ページのリンク>>こちらから
また、題材を漫画に求めつつも、絵を部分的に切り抜いたり、吹き出しとセリフの使い方を工夫するなどして洗練された表現としました。漫画のワンシーンも、こうして改めて1つの絵として提示されると面白いものです。
このシリーズは5年ほどで終わってしまいますが、以後リキテンスタインは、同様の手法を用いてピカソやモンドリアンなど過去の名作の引用というかたちで作品を展開していきました。
現代へと続くポップ・アートの系譜
村上隆は、漫画やアニメ、ゲームなど独自の発展をしてきた日本のサブカルチャーを巧みに取り入れて作品を制作している |
例えば、1980年代に顕著になった、戦略的に既成のキャラクターや大衆芸術などを盗用(アプロプリエイション)していく「シミュレーショニズム」は、消費社会のシステムにポップ・アートとは別の形で切り込んだ動きだと言えます。
広告看板のように、画面に文字を配置して社会的なメッセージを込めるバーバラ・クルーガー(1945年-)や、有名人をまるごと彫刻化してしまうジェフ・クーンズ(1955年-)などがシミュレーショニズムの作家として挙げられます。
2003年に北海道立函館美術館の常設展に出品された、バーバラ・クルーガー「無題(We will undo you)」展覧会紹介ページのリンク>>こちらから
日本では、1990年代より、漫画やアニメ、ゲームなど独自の発展をしてきた日本のサブカルチャーを巧みに取り入れて作品を制作している村上隆などが、これらの系譜を辿っていると言えるでしょう。
村上隆が主宰するアート制作・プロデュースのプロジェクト(会社)「カイカイキキ」オフィシャルサイトへのリンク>>こちらから
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いかがでしたでしょうか。現代社会そのものが生み出したポップ・アートは、誰にでも親しめる分かりやすさがある一方で、逆に本当の「芸術」とは何か、という壮大なテーマを提示していると捉えることもできるでしょう。多様な文化が共存する現代において、アートそのもののあり方について考えさせられます。
「巨匠で見るアート:近・現代編」の次回は少し時代をさかのぼり、写実主義から印象主義への転換機をつくったエドゥアール・マネを取り上げます。お楽しみに!