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伝説の雑誌『幻影城』の大復活

1970年代後半に刊行され、多くの作家を輩出した伝説の雑誌『幻影城』――その執筆陣による豪華な"復活本"が完成しました。

執筆者:福井 健太

探偵小説専門誌『幻影城』

『11枚のとらんぷ』
奇術に出演するはずの女性が自室で殺され、その周囲には奇術小説集『11枚のとらんぷ』で使われる小道具が散らばっていた。作中作の技巧を活かした著者の初長編。
日本屈指の探偵小説コレクターだった島崎博が、江戸川乱歩の評論集『幻影城』から名を採って創刊した探偵小説専門誌――それが『幻影城』である。1975年から1979年にかけて53冊が刊行された本誌は、約4年半という短命にも関わらず、多くの才能を輩出することでミステリー界に多大な影響を残している。泡坂妻夫、田中文雄、田中芳樹、連城三紀彦などが"幻影城新人賞"を受賞したほか、竹本健治のデビュー作『匣の中の失楽』が連載されたのも本誌だった。後に『ぼくらの時代』が江戸川乱歩賞に選ばれる栗本薫もまた、本誌の評論賞を通じて世に出た書き手にほかならない。こうして彼らの名前を並べるだけでも、本誌がいかに大きな足跡を残したかは明らかと言えるだろう。

同人誌版『幻影城の時代』

『匣の中の失楽』
探偵小説マニアによる実名小説の中で起きた密室殺人。どれが現実でどれが作中作なのか? 奇抜なトリックを駆使したアンチミステリーの名作。
『幻影城』は伝説の雑誌として語り草になり、1997年から翌年にかけて全3巻のアンソロジー『甦る「幻影城」』が刊行されたものの、以後はあまり顧みられることがなかった。そんな2006年に"「幻影城の時代」の会"が編纂した同人誌『幻影城の時代』は、島崎博インタビュー、関係者によるエッセイと評論、愛読者のアンケートなどが盛り込まれた好著だった。これが短期間に完売したことを受け――さらに中身を充実させて――講談社から一般書籍として上梓されたものが『幻影城の時代 完全版』なのである。

次のページでは『幻影城の時代 完全版』を御紹介します。
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