ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

雫井脩介、待望の最新"犯罪小説"(2ページ目)

ベストセラー『犯人に告ぐ』で知られる人気作家・雫井脩介の最新刊が登場。犯罪小説作家と脚本家をめぐる本格長編サスペンスです。

執筆者:福井 健太

4年ぶりの長編サスペンス『犯罪小説家』

『犯罪小説家』
新進作家と脚本家の出逢いが掘り起こした変死事件。自殺サイトの秘められた過去とは? 巧みな構成と意外性を備えた正統派のサスペンス長編だ。
雫井脩介の最新刊『犯罪小説家』は――2004年刊の『犯人に告ぐ』以来――約4年ぶりの長編ミステリーだ。新進作家・待居涼司の出世作『凍て鶴』に映画化の話が持ち上がり、監督には人気ホラー脚本家・小野川充が選ばれた。小野寺は4年前の事件――自殺系サイト"落花の会"のカリスマ・木ノ瀬蓮美が多摩川公園で溺死したことを語り、待居の作品にはその影響が見られると強引に主張する。さらに小野寺はルポライターの今泉知里に"落花の会"を調べさせるが、今泉は待居と小野寺が"落花の会"に関係していた可能性に思い至るのだった……。

待居が著者の投影であることは想像に難くないが、そこへ小野寺が絡むことで物語は奇妙なねじれを見せていく。自殺サイトの過去を調査する今泉もまた――自殺志願者たちの欲求に直面することで――己の心の暗部に対峙することになる。待居と小野寺の感性の差が生み出す不穏なムード、リーダビリティの高さ、印象的な結末などを兼ね備えた良質のサスペンス。『犯人に告ぐ』のような警察小説ではないが、純度の高いサスペンス小説ゆえに(むしろ)本来の持ち味が出ているとも言えそうだ。本書に込められた"企み"には一読の価値がある。

【関連サイト】
【週末読む、観る】…MSN産経ニュースサイト内の『犯罪小説家』紹介ページです。
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