L・P・ハートリーとは?
作品集は上梓されないものの、アンソロジーには頻繁に採用される短編の名手――そんな作家はさほど珍しいものではない。2004年刊の『誰でもない男の裁判』で注目を集めたA・H・Z・カー、2005年刊の『クライム・マシン』でブレイクしたジャック・リッチーなども、日本では長らく"アンソロジーでよく見る作家"という位置付けだった。L・P・ハートリーもそんな作家の一人だったのである。L・P・ハートリーは1895年イングランド生まれ。オックスフォード大学で同人誌『オックスフォード・アウトルック』の編纂に携わり、同誌に発表した書評と短編小説によって文壇デビュー。第二次大戦後には"自伝的長編三部作"で注目を集め、ベストセラーとなった『恋を覗く少年』は映画化もされた。評論や一般小説にも定評のある書き手だが、日本では怪奇短編作家として知られており、その作品群は多くのアンソロジーや雑誌に掲載されている。そんな著者の――満を持して刊行された――本邦初の作品集が『ポドロ島』なのだ。
『ポドロ島』の奇妙な魅力
怪奇小説の名手として知られるL・P・ハートリーの短編集。名作「ポドロ島」を含む12編の"奇妙な物語"を味わえる。 |
次のページではアンソロジーを御紹介します。