1975年東京生まれ。第5回ホラーサスペンス大賞特別賞に選ばれた『背の眼』で2004年にデビュー。第2長編『向日葵の咲かない夏』が好評を博し、2006年に上梓した『骸の爪』『シャドウ』が絶賛を浴びた後、2007年2月には最新刊『片眼の猿』を発表――国産ミステリーの愛読者にとって、道尾秀介は「旬」の書き手に違いない。その著書をデビュー作からチェックしていこう。

ホラーとミステリーを接合した
記念すべきデビュー作

『背の眼』
山中の村で児童失踪事件が相次いだ。事件と「背の眼」が映った心霊写真には関係があるのか? 独自のセンスが光る俊英のデビュー作。
デビュー作『背の眼』は(先述したように)第5回ホラーサスペンス大賞の特別賞受賞作。福島県白峠村に立ち寄ったホラー作家の道尾は、山中の河原で「レエ……オグロアラダ……ロゴ……」という奇妙な声を耳にする。その意味を悟った彼は東京へ戻り、旧友・真備庄介の「霊現象探求所」を訪れることに。ちょうど、背中に2つの眼が映った白峠村の心霊写真を調べていた真備は、助手の北見と道尾を連れて白峠村へ赴くのだが……。

いかにも「ホラーサスペンス大賞」らしく、前半は超自然ホラー、後半は謎解きモノとして書かれているのが特徴。奇抜な設定と真相を備えた第一級の娯楽小説である。

異色の青春ミステリー
『向日葵の咲かない夏』

『向日葵の咲かない夏』
小学校を休んだS君の家に立ち寄った僕は、彼の首吊り死体を発見してしまう。大人を呼んで戻ると死体は消えていた。その夜、S君が現れて「僕は殺された」と訴え始める……
第2長編『向日葵の咲かない夏』もユニークな作品だ。1学期の終業式の日、小学校を休んだS君の家で「僕」が見たものは、首を吊ったS君の無惨な死体だった。「僕」が先生と警察を呼んで来ると、死体は跡形もなく消え失せていた。その夜、S君の生まれ変わりと称するモノが「僕」の部屋に現れ、自分は殺されたのだと告白する。「僕」と妹のミカは半信半疑のまま、真相を探るために動き出すのだった。

冒頭の展開こそオーソドックスな本格ミステリーっぽいが、生まれ変わりのモノが出てきた瞬間、多くのミステリー読者は唖然とさせられるだろう。異様な状況を受け入れて読んでいくと、今度は謎解きをベースにした青春小説の苦味が染み出してくる。決して愉快な物語ではなく、拒否反応を示す読者もいそうだが、この痛切さは本作の最大の魅力でもある。ビターな物語が好きな人には必読モノの野心作なのだ。

次のページでは道尾秀介の2つの大傑作に迫ります。