浮かび上がる多くの謎
【こちらも注目】折原一『タイムカプセル』は、なんと袋とじの部分があり、登場人物と一緒にタイムカプセルを開けられるという趣向が。 |
(1)ヒトミと幼なじみのアユミ、サヤカの3人は、幼稚園のころに恐竜と遊んだことがある。現代に生きた恐竜がいるはずもないのだが、その恐竜は子どもの空想が生んだ幻だったのか?
(2)吊り橋に残された恐竜の足跡。浅井先生は恐竜に殺された?
(3)20年前、恐竜の化石が大量に発掘されたときに起こった事件は今回の事件と関わりがあるのか?
大きなところでは以上の3点。なかでも3人の少女が共有する(1)の謎は魅力的です。
【こちらも注目】篠田真由美『王国は星空の下』は建築探偵でお馴染みの著者の新シリーズ第一作。 |
描いているのは懐かしさ
本書の登場人物は14歳。微妙な年ごろです。ヒトミをはじめとして、恐竜オタクのサヤカも、学校一の美少女のアユミも問題を抱えています。彼女たちの悩みはなかなかヘビーです。でも、文章は淡々としています。著者は現在の痛みとは距離を置き、むしろ「懐かしさとは何か」ということを中心に描いているのではないでしょうか。大人から見れば14歳というのは子どもだけれども、14歳なりの懐かしさを持っている。現実の醜さを知った今から振り返ればあまりにも完璧で美しくて、もの悲しくなるような記憶を。
そんなことを考えた一冊でした。
創刊ラインナップは『雨の恐竜』『タイムカプセル』『王国は星空の下』といずれも一癖ある小説が揃った「理論社ミステリーYA!」。これからの展開に期待です!