タフなユーモアの秘密
<DATA>タイトル:『おっぱいとトラクター』出版社:集英社著者:マリーナ・レヴィツカ訳者:青木純子価格:840円(税込) |
ソ連の支配や人為的大飢饉を経て、祖国を離れイギリスにわたった両親。強制労働キャンプを経験した姉と、イギリスで生まれた妹のあいだにあるギャップ。家族はそれぞれが抱えている重い記憶については多くを語らずに、日々くだらないことで喧嘩している。ずしんときたのは、440ページのこの文章です。
まだ幼かった頃のわたしは、父さんには気骨のある勇者であってほしいと思っていた。だから父さんが脱走兵になってドイツに逃げたことを恥じていた。母さんにはラブロマンスのヒロインであってほしかった。ふたりが紡ぐ物語は勇気と愛に彩られたものであってほしかった。だが、大人になって知ってみれば、ふたりはヒーローでもヒロインでもなかった。ふたりは生き延びた、ただそれだけだった。
紆余曲折を経て、老父があることをするラストシーン。生き延びる力を与えてくれる気がしました。
◆『おっぱいとトラクター』特設サイト
http://renzaburo.jp/oppai/