語らないことで浮かび上がるもの
<DATA>タイトル:『夜のピクニック』出版社:新潮社著者:恩田陸価格:660円(税込) |
散々回り道をしたあげく、ようやく“ある出来事”が明かされる。作中で綾音もいっているが、とてもささやかな出来事だ。だけど、彼女はこのことをきっかけに、自分が何になりたいのか気づいてしまう。
自分が何を望んでいるのか、直視できない。望んでいることすら、誰にも知られたくない。だから、その周辺をぐるぐる回る。中心には踏み込めなかったのだ。第一章の最後の最後で、さらっと触れた“あの人”に対しても。
続く戸崎衛(とざきまもる)、箱崎一(はこざきはじめ)の章も、核心を迂回する話だ。本当になりたいもの、本当に好きな人のことを口にするのが、どうしてそんなに怖いのか。
大学時代って不思議だ。なんとも切ない。そして痛い。