3月といえば卒業シーズン。小説で学生時代を振り返ってみる、というのはいかが? 『夜のピクニック』の恩田陸による大学生小説をご紹介。

恩田陸が初めて大学時代を描いた『ブラザー・サン シスター・ムーン』

ブラザー・サン シスター・ムーン
<DATA>タイトル:『ブラザー・サン シスター・ムーン』出版社:河出書房新社著者:恩田陸価格:1,470円(税込)
高校3年生が主人公の『夜のピクニック』にこんな文章がある。

あたしたちの「人生」はまだ先だ。少なくとも大学に入るまでは、あたしたちの「人生」は始まっていない。

では実際に大学に入るとどうなのか?

狭かった。学生時代は狭かった。広いところに出たはずなのに、なんだかとても窮屈だった。

という回想で『ブラザー・サン シスター・ムーン』は始まる。本書は、地方の進学校から東京の同じ大学に進んだ3人の男女の視点で描かれている。

第一章の語り手は楡崎綾音(にれざきあやね)。“女子大生ブーム”といわれた時代に、色気もお金もなく、本ばかり読んでいる“女子学生”だった。何かを好きで夢中になりかけても、極める前に入り込んでいる自分に醒めて引いてしまう。そんな綾音がバイト先のバーで遭遇した“ある出来事”について語るのだが、話はなかなか核心に踏み込まない。

核心を迂回し続ける語りから浮かび上がってくるものとは?