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『夢をかなえるゾウ』と自己啓発本の世界(2ページ目)

なんと130万部を突破し、小栗旬主演でドラマ化も決まっている『夢をかなえるゾウ』。どうして本書が売れたのか? 『自分探しが止まらない』と併読しながら考えてみたい。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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速水健朗『自分探しが止まらない』

自分探しが止まらない (ソフトバンク新書 64)
<DATA>タイトル:『自分探しが止まらない』出版社:ソフトバンククリエイティブ著者:速水健朗価格:735円(税込)
『夢をかなえるゾウ』の主人公「僕」は、“すげー普通の会社員”の自分が嫌で、インドに行ったり、建築家になりたいという夢にチャレンジしたりする。典型的な「自分探し」をしている若者ではないか。

自己啓発本が売れる背景には、「自分探し」をしている人の存在がある。「自分探し」がなぜ日本の社会に浸透したのか。『夢をかなえるゾウ』の参考文献にあげられているような成功哲学本から、「あいのり」や「機動戦士ガンダム」といったエンターテインメント作品まで、多くの事例をあげて考察したのが『自分探しが止まらない』だ。

いろんな自己啓発本のルーツになっている思想を指摘したり、若者がフリーター化する理由を「やりたいこと」というキーワードを用いて分析したり、自分を探す人たちを食い物にする「自分探しホイホイ」について取り上げたり。「自分探し」にまつわる情報がわかりやすく紹介されている。あとがきによれば、本書は

終身雇用や会社中心主義が崩壊し、就職状況が悪化した中で自分探しに迷い出した団塊ジュニア世代の滑稽な姿をまとめてみようというものだった。

という。実は著者も団塊ジュニア世代のど真ん中、1973年生まれ。そして『夢をかなえるゾウ』の著者は、3歳年下の1976年生まれ。やはり就職状況が悪化した中で社会に出た世代だ。

ほぼ同世代の著者が書き、全く異なる読後感を与える2冊。併読すると、既存の自己啓発本のベストセラーの概要が何となくつかめるし、自己啓発本がどんな風に書かれているかわかる。ぜひお試しあれ。

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