変だから官能的ジュリア・スラヴィン「まる呑み」

変愛小説集
<DATA>タイトル:『変愛小説集』出版社:講談社編訳者:岸本佐知子価格:1,995円(税込)
「僕らが天王星に着くころ」は愛し合う2人が離れ離れになる話だったが、最後にとりあげる「まる呑み」は近づきすぎる話。

ある夏の日。語り手の人妻「私」は、芝刈りのアルバイトに来た少年・クリスを見た途端に発情する。若いお肌の質感、後ろ向きにかぶった野球帽、生意気な言葉遣い。自分を抑えられなくなった「私」は、次の家に向かったクリスを追いかけ声をかける。クリスは「私」の尻をつかみ、舌を入れてくる。

で、「私」は彼の舌を強く吸っているうちに、なんとまるごと彼を呑み込んでしまうのだ。そこから始まる2人の共同生活(?)の様子がおかしい。お馬鹿な若い男の子を寄生させたらこうなるのか、という感じだ。

特に夫の会社のパーティで招待客と会話しているときのクリスの行動に爆笑。体の内部にいる男と、どうセックスするのか。奇想がエロティシズムも高めている。

男は自分の欲求を満たしながら安全な場所でぬくぬくと暮らし、女は男のすべてを独占する。グロテスクであっても、ある種、理想の関係を描いているのかも。ラストは切ないが……。

本書には他にも変だからこそ魅力的な話がいっぱい。ぜひ自分の偏愛する1編を見つけていただきたい。

【関連サイト】
「実録・気になる部分」…翻訳家・岸本佐知子のエッセイ。2004年の日記をなぜか1年後に更新するというマイペースっぷりが素晴らしい。読めば病みつきになる面白さ。

【ガイドの読書日記】
「石井千湖日録」…最近気になる新刊、積読、読了本など紹介しています。


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