変だから悲しいレイ・ヴクサヴィッチ「僕らが天王星に着くころ」

変愛小説集
<DATA>タイトル:『変愛小説集』出版社:講談社編訳者:岸本佐知子価格:1,995円(税込)
次は「僕らが天王星に着くころ」。愛する人が難病に冒される悲しみを描いた作品は枚挙に暇がない。そんな病気モノの恋愛小説のなかでも、とびきり変な話だ。

主人公のジャックの妻、モリーが、アメリカで流行している奇病にかかったと判明する時点から物語は始まる。その奇病とは、全身の皮膚が少しずつ宇宙服になっていき、やがて宇宙に飛びたってしまうというもの。原因不明、治療は不可能。ジャックは“こうすれば一緒に宇宙に行けるかも”とアイデアを思いついては話しかけるのだが、絶望したモリーはことごとく拒絶する。

結婚したてのころ、彼はモリーによく言ったものだ――きみのどこに惚れたって、どんな馬鹿げた思いつきでも、何の遠慮もなく言えるっていうところだよ。それを失いつつあるのは辛かった。

肉体的な距離よりも、精神的な距離を意識したときの方が喪失感は深い。しかも2人を分かつのは、死ではなく宇宙服。そこで醸しだされる滑稽な雰囲気と淡々とした文章が、逆に別れの悲しみを際立たせる。

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