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この新人がすごい!? 『サウスポー・キラー』

『四日間の奇跡』ですっかりお馴染み「このミス!大賞」第4回大賞受賞作。クールでタフ、いい男が活躍するハードボイルド野球ミステリー。

執筆者:梅村 千恵


第3回「このミス!大賞」受賞作。孤独に闘うイイ男。うーん、たまりません!

『サウスポー・キラー』
・水原秀策(著)
・価格:1680円(税込)

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■クールな頭脳派にしてタフ、ユーモアセンスあり。「カッコよすぎでしょ!」な主人公が奮闘する野球ミステリー

 ミステリー作品を中心としたエンタメ作品のランキング本としてすっかりお馴染みの『このミス』こと「このミステリーがすごい!」が主宰する「このミス!大賞」。
 第一回受賞作『四日間の奇跡』がベストセラーとなったこともあり、エンタメ作品の登竜門として認知度を高めつつある。
 第三回受賞作は、『サウスポー・キラー』と『果てしなき渇き』の2作。まず、『サウスポー・キラー』をご紹介する。

 沢村航は、超一流大学で六大学野球に加盟しているが、成績を期待されていない大学(たぶん、あの大学)を卒業して、アメリカ留学を経て超人気球団オリオーズ(たぶん、モデルは、あの球団)の往年の名選手であり、国民的ヒーローである葛城監督(たぶん、モデルは、あの人)の直感に見出され、同球団に入団した左投手。
 集団主義、精神主義を嫌い、「走り込み・投げ込み」を信奉するコーチを無視して、理論的な筋力トレーニングでフィジカルを鍛える彼が、旧弊な体質が色濃く残るチーム内で浮きまくるのは、当然のこと。トレードの危機に立たされている先輩投手、投手コーチの島谷・・・敵意をむき出しにする人間も少なくない。
 そんな沢村は、ある時、突然、自宅前で見知らぬ男に襲われる。「約束を忘れるな」という謎の言葉ととも去る男。彼の奇禍はこれで終らなかった。オリオーズのエース・三浦の百五十勝記念のパーティでは、マスコミの面前で複数の男たちから暴行を受けることに。そして、間をおかず、球団首脳やマスコミ関係者あてに、「Baseball judge」なる人物から「沢村は暴力団と関係し、八百長をしている」という告発文が送られてくる。
 スキャンダルを徹底的に嫌う球団副社長の強い意向もあり、二軍に落とされた沢村は、ことの真相を自ら探る決意をする。超ベテラン女性記者や、渦中で出会った女優、警察キャリアとなった大学の同期生たちのささやかな協力を得て、次第に事件の核心に迫っていく沢村だが・・・

 孤独を許容するクールなスタンス、頭脳派にしてタフ、ユーモアのセンスもある・・・いやぁ、この主人公。ちょっとカッコよすぎでしょ。
 美女との絡みも、適度にアンニュイで、適度にエロティックで、男性読者にも女性読者にも支持されそうだ。クールな彼が、ヨレヨレになるクライマックスの野球の試合のシーンなんて、かなり母性本能をくすぐられる。

 そう、こういう主人公が、孤軍奮闘するお話、かつてはけっこうありましたよね・・・
『サウスポー・キラー』
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