タイトル『ゴールデンスランバー』の由来は?
警察が率先して彼に濡れ衣をきせようとしているという絶望的な状況の中、青柳雅春は“習慣と信頼”を武器にして間一髪でピンチを切り抜けていく。よく知っている、手垢にまみれた言葉。平穏な日々においては大事だといってもスルーされそうな言葉が、物語の随所で光を放つ。
また、タイトル「ゴールデンスランバー」は、ビートルズの曲名からとられている。分裂状態にあったバンドをポール・マッカートニーがどうにか取りまとめて録ったアルバム『アビイロード』の1曲。ポールがばらばらになったメンバーをもう一度つなげようとしたこと、〈帰るべき故郷〉というフレーズにこめられた思いが伝わってきたとき、温かなものがこみあげる。
そして、個人の無力をこれでもかと思い知らされる青柳雅春が、最後にたどりついた地点を確かめてほしい。安易な希望を見せるわけではないのに、抜群に読後感のいいラストになっている。本屋大賞も納得。万人におすすめしたい1冊だ。
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