村上春樹にため息をつかせた作家トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』
<DATA>タイトル:『ティファニーで朝食』出版社:新潮社著者:トルーマン・カポーティ訳:村上春樹価格:1,260円(税込) |
名刺には「ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング(旅行中)」の文字。夜になると街へ出て行き、しばしば鍵をなくして同じアパートの住人の部屋に転がり込む。主人公の「僕」と一緒にホリーに出会った瞬間、読者は彼女に魅了されるだろう。
その身体はいかにも上品に細かったものの、朝食用のシリアルを思わせるような健康な雰囲気があり、石鹸やレモンの清潔さがあった。
飼い猫にも名前をつけず、しばられることを嫌い、ティファニーで朝ごはんを食べるような身分になっても自分のままでいたいというホリー。その存在感が「もうこれしかない!」と思わされる比喩や生き生きとしたセリフで立ち上がる。
「花盛りの家」の恋に落ちたかどうか知るために蜂を握る娘、「ダイヤモンドのギター」の冬の夕暮れに似たブルーの目を持つ青年、「クリスマスの思い出」のフルーツケーキを焼くのが得意な“僕の親友”。他の収録作の登場人物も忘れがたい。
村上春樹と親交が深く『ティファニーで朝食を』のあとがきにも名前が登場する人気翻訳家は? 答えは次ページに。