今年も新書が強かった
知的好奇心を刺激され、文章の美しさも堪能できる1冊。 <DATA> タイトル:『生物と無生物のあいだ』 出版社:講談社 著者:福岡伸一 価格:777円(税込) |
ガイドのイチオシは『生物と無生物のあいだ』。著者の子供時代から研究者になった現在までのエピソード、野口英世からシェーンハイマーまで科学者の研究秘話、生物学における歴史的な発見の紹介を軸に「生物とは何か」にせまる1冊。特に文章がいい。情景描写が巧く、「ふるまい」や「折りたたむ」など、よく知られた言葉の使い方が新鮮だ。発売当初は宣伝もほとんどしていなかったのに、クチコミでどんどん売れるようになったというのも納得。
品格ブーム続く
1位の『女性の品格』は明らかに2006年の1位『国家の品格』をふまえて出された。『国家の品格』が「武士道」再評価本とすれば、『女性の品格』は「大和撫子」再評価本。それをキャリアウーマンのはしりである著者が書いた。品格の磨き方も、お礼状を出すとか、花の名前をおぼえるとか、身近ですぐできそうなことから紹介しているところがとっつきやすい。『日本人のしきたり』なども、日本的なものを再評価する流れで売れたのだろう。感動本の需要は高い
友情あり、恋あり、成長あり。王道の青春小説! <DATA> タイトル:『一瞬の風になれ』1巻 出版社:講談社 著者:佐藤多佳子 価格:1,470円(税込) |
『陰日向に咲く』『佐賀のがばいばあちゃん』などの“笑って泣ける本”の流れで出てきたのが『ホームレス中学生』。来年、東宝系で映画化されることも決定し、さらに人気は拡大しそうだ。
映画化といえば『恋空』も話題になった。ケータイ小説は他にも『赤い糸』『君空』『もしもキミが。』などがランクイン。大人が読むと「おんなののど自慢」(かつてNTV系で放送されていたワイドショー番組「ルックルックこんにちは」の名物コーナー。視聴者の女性が不幸な半生を告白、その後に演歌を熱唱する)かと思うが、本を読まない層に「泣ける!」と支持されている。
他にも小泉元首相のひとことでベストセラーになった『鈍感力』、テレビで紹介され大ヒットした『田中宥久子の造顔マッサージ』など、メディアの影響力の強さを感じさせるベストセラーも多かった。
来年はどんな本が話題になるのか。とりあえず、新書からはしばらく目が離せなさそうだ。
【関連リンク】
・TOHAN Web Site/週間ベストセラー…出版取次・トーハンが毎週集計するベストセラーランキング。初登場のものには★がついているので、売上げ急上昇中のアイテムがわかりやすい。
【ガイドより】
・読撃者の証言…ガイドのブログでも本を紹介しています。