父の死にまつわる謎と妖しい美女・弁天
狸の話とはテイストがまったく異なり、冷んやりと美しい怪奇幻想譚。<DATA>タイトル:『きつねのはなし』出版社:新潮社著者:森見登美彦価格:1,470円(税込) |
弁天は彼女に恋をしてしまった天狗・赤玉先生にさらわれてきた。が、天狗教育を受けた結果、天狗よりも天狗に。赤玉先生の権威が失墜するきっかけを作り、いまは自由きままに暮らしている。父を鍋にしたのは、弁天が所属している「金曜倶楽部」の会員だった……。偏屈なのに、弁天にはメロメロの赤玉先生も魅力的だ。
そしてもう一つの軸が、下鴨家と夷川(えびすがわ)家の因縁。夷川早雲は総一郎の弟、四兄弟には叔父にあたる。その息子で何かにつけて下鴨家に嫌がらせをする金閣・銀閣のキャラも憎めない。例えばムツカシイ四字熟語が好きなのはいいが「樋口一葉」も四字熟語だと思っている、虎になった矢一郎に噛まれないように鉄のパンツをはいてお腹を壊す、といった感じ。
金閣・銀閣の妹の海星は、矢三郎の元婚約者。決して矢三郎の前には姿をあらわさず、罵詈雑言を浴びせるばかり。でも、父と母の評価は高い。婚約を解消したあとも何かと関わってくる海星と矢三郎の行方も気になる。
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