宮部みゆきが描く現代の母子像
だんだん明らかになる少女殺害事件の背景。新たな拉致事件も勃発し、ページをめくる指が止まらない。 |
等のことをもっと知りたいと願う敏子、娘を殺してしまった土井崎向子、そして土井崎家の事件に深い関わりのある人物の母。いずれも子を想い、それゆえに逸脱した行動をとる母親だ。母の愛は美しいだけではない。悲しい。そして怖い。
例えば、終章「楽園」で、滋子と土井崎向子が初めて対面するシーン。娘の殺害状況について語る向子の姿に、滋子は奇妙なものを見るのだ。ぜひ読んで確かめてほしい。何ともいえない複雑な気持ちになるはずだ。
『楽園』は、母親の不可解な側面を、子供を持つことができなかった滋子の目を通して描いた作品といえるのではないだろうか。
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タイトル:『楽園』(上巻)(下巻)
出版社:文藝春秋
著者:宮部みゆき
価格:各1,700円(税込)
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