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人気作家が描く現代の母子像『楽園』(2ページ目)

「All About人気作家ランキング」で第1位に輝いた宮部みゆき。その作品世界を紹介するシリーズ。今回とりあげる『楽園』は親子をめぐる光と闇を描いた物語です。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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宮部みゆきが描く現代の母子像

楽園(下)
だんだん明らかになる少女殺害事件の背景。新たな拉致事件も勃発し、ページをめくる指が止まらない。
滋子は絵に描かれたとおぼしき土井崎家を訪れる。床下に娘の死体を隠し、息をひそめて暮らしていた両親。姉が失踪した理由を何も知らずに育ち、ある日突然、人生を破壊された妹。すべての秘密を呑み込んでいた家。あの家が知っていたことを知りたい。なぜ等が知っていたのかも知りたい。滋子は本格的に調査し始める。その過程で彼女が向き合うことになるのは、さまざまな母子関係だ。

等のことをもっと知りたいと願う敏子、娘を殺してしまった土井崎向子、そして土井崎家の事件に深い関わりのある人物の母。いずれも子を想い、それゆえに逸脱した行動をとる母親だ。母の愛は美しいだけではない。悲しい。そして怖い。

例えば、終章「楽園」で、滋子と土井崎向子が初めて対面するシーン。娘の殺害状況について語る向子の姿に、滋子は奇妙なものを見るのだ。ぜひ読んで確かめてほしい。何ともいえない複雑な気持ちになるはずだ。

『楽園』は、母親の不可解な側面を、子供を持つことができなかった滋子の目を通して描いた作品といえるのではないだろうか。

<DATA>
タイトル:『楽園』(上巻)(下巻)
出版社:文藝春秋
著者:宮部みゆき
価格:各1,700円(税込)

【関連リンク】
大極宮…大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆきが所属する大沢オフィスの公式サイト。「立ち読み」コーナーで本の一部を読むことができる。最新情報は「週刊大極宮」でチェック。


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