新刊ヒット予報！『サクリファイス』(2ページ目)

『サクリファイス』というタイトルの意味は……

同じ著者の『天使はモップを持って』は掃除の天才・キリコが名探偵を務める連作ミステリー。『サクリファイス』にハマったらこちらもどうぞ。

国内のレースで実績を残した誓は、石尾や伊庭とともにベルギーで開催される大会へ。そこである人物に再会したことにより、誓は石尾に対して抱いた疑惑を打ち消せなくなる。そして、ついにレース中に大事件が起こってしまう。“サクリファイス（犠牲）”になったのは……。

そこからは、予想を裏切る展開に翻弄されながら一気読み。事件の背景にあるのは、日本のプロ選手を取り巻く厳しい状況と、真剣勝負に挑む者たちの孤独と誇りだった。第十章のラスト1行にたどりついたとき、読者はタイトルの意味を反芻するだろう。真相を知った誓の決断にも、深い感動をおぼえる。

自転車競技という魅力的なスポーツを通して、ひとりの青年の成長を描いた『サクリファイス』。今までもミステリーファンの間では評価が高かった著者だが、この作品で大ブレイクするに違いない。

＜DATA＞
タイトル：『サクリファイス』
出版社：新潮社
著者：近藤史恵
価格：1,575円（税込）

【関連リンク】
・むくいぬ屋仮宅…作家・近藤史恵の公式ブログ。作家の日常が垣間見られるほか、自転車ロードレースについてもいろいろ書いてあります。