祝!第135回直木賞受賞。郊外の町で便利屋を営む多田。そこに転がりこんできた高校時代の友人・行天。二人の男の行く手には・・・ 『まほろ駅前多田便利軒』 ・三浦しをん(著) ・価格:1680円(税込) |
■祝!直木賞!やさぐれ系、謎をもつ男ふたり、エンターテインメント性豊かな物語の底流に流れるのは・・・
『格闘するものに○』でデビュー、語りの絶妙さに脱帽『むかしのはなし』『私が語りはじめた彼は』妄想・暴走・爆笑エッセイ『桃色トワイライト』『しをんのしおり』・・・最近、ノっているな、あ、で、直木賞受賞作。
東京のはずれに位置するまほろ市の駅前にある「多田便利軒」。便利家稼業をたった一人で営む多田啓介のもとに、高校で同級生だった行天春彦が転がりこんでくる。高校時代、誰とも口をきかないという変人振りを発揮していた行天。彼の小指の傷に、多田は苦い思いでがあるのだった。
なぜ彼が自分のもとにやってきたのか、まったく釈然としない多田だが、そんな彼の思いとは関わりなく「多田便利軒」には日々依頼が持ち込まれ、厄介ごとが多発する。預かったチワワの飼い主が蒸発し、新しい飼い主として名乗りをあげたのは・・・塾の送り迎えを依頼された小学生がひそかにやっていたヤバいアルバイト・・・行天に関わる謎も多田を困惑させる。そうこうしているうちに、行天に大ピンチがやってきて・・・
それぞれに過去に傷を抱えたやさぐれ系の多田・行天のコンビ(著者の傾向からすると、もちろん、そっち系、萌え!の期待も多いに抱かせるのだが)に、娼婦、頭の切れる若きヤクザ、生意気な小学生など、一癖も二癖もある登場人物たちが絡む。著者独特の諧謔も随所に織り込まれ、楽しめる一作だ。しかし、物語の底流には、シリアスで思いテーマが内在されている。