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『ガール』

『空中ブランコ』で直木賞を受賞、新作が常に待たれている著者の最新作。5つの短編すべて主人公は、30代OL!いろいろあるけどキュートでたくましい女たちが元気をくれます!

執筆者:梅村 千恵


『ガール』
悩みも焦りもあるけれど、それでもちゃんと働きます!キュートでたくましい30代働く女性を描いた傑作短編5編

『ガール』
・奥田英朗(著)
・価格:1470円(税込)

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■30代働く女性たちを主人公にした連作短編集。悩んでるけど、焦っているけど、それでもちゃんと働きます!キュートでリアルな女たちに喝采!
 
 直木賞作家にして、ハズレ作品なし!まさに、文芸界・出版界(?)を背負って立つ書き手の一人である著者の最新作。『サウスバウンド』の「団塊世代と少年」に対し、今回は、「30代キャリアガール」が主人公。それにしても、やっぱり、この方、タダモノではない!

 広告代理店に入社して10年、年齢不相応な先輩が多数いる職場で、女の子=ガールであることを堅守してきた由紀子だが、ある先輩に対する男性社員の評価を耳にして・・・(表題作)。管理職に抜擢された女性がぶつかる男性社会の壁(『ヒロくん』)、出世などに興味がないゆえに上司にもズバズバものを言う「一人タカ派」だった女性がマンション購入決意したことで直面する心境の変化(『マンション』)、シングルマザーになり会社に戻り、ビジネスの最前線に復帰した女性の葛藤(『ワーキング・マザー』)・・・など、30代の働く女性たちを描いた5編。

  カイシャにはどうしようもなくハラたつヤツいるし、おまけにソイツがけっこう認められたりするし、プライベートでは逃げられないことや他人に押し付けられないことっていっぱいあるし、将来のことも不安だし、若ぶっているけどよく考えてみれば若さが武器になる季節はとうに過ぎているし・・・さまざまな焦りや悩みに直面しながらもキュートにたくましく企業社会を生き抜いていく女性たち。もちろんとても魅力的なんですが、それにしても、はっきり言って驚きました!男の身で、なぜにここまで・・・なぜ、知ってる?なぜ、わかる?だって、もう、全編、「ある、ある」「いる、いる」「そう、そう」の連発!

 たとえば、『ガール』の主人公は、同窓会で主婦になった友人にあった後、こう心のうちでつぶやく。
――女は生きにくいと思った。どんな道を選んでも、ちがう道があったのではと思えてくる――
 
 そう、そうなのよ、そう、そう、そう(ってシツコイんですが)!
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