■「枠」の中で生きざるを得ない人の葛藤、痛み、悲しみを時代小説という器に盛り込む
そう、常に、そこに生きる人間にあるのである。
けっして余裕があるとは言えない暮らしの中で起こる理不尽な状況の原因を人外なる存在に帰すことで生き抜いてきた庶民たち。
そんな中で、すべてのものに理があるという信念を持ちながら、時として、その信念を曲げざるを得ない状況に追い込まれざるを得ない知識人たる井上家の人々。
その板ばさみとなる、聡明な少女・宇佐。
思いをかけた人の死の真相を追究することから逃げた自身の限界と弱さを誰よりも知り、苦悶する下級役人・渡部。
たとえば、社会というものが与えた何がしかの「枠」の中で生きざるを得ない人々の愚かさや葛藤、矛盾、悲しみ、痛みを著者は、時代小説という器に見事に盛り込んでいく。
そして、「悪鬼怨霊」となった、なることを選ばざるを得なかった者も、やはり人である。
その人の内なる真実に触れえたのは・・・
歴史好きの方なら、すでにご推察のこととは思うが、舞台となった架空の藩・丸海藩のモデルは、讃岐の丸亀藩、加賀守のモデルは、妖怪として知られ、罪を受けて同藩にお預けとなった鳥居耀蔵である。
でも、そんなこと、知らなくたって、まったくもって、ノープロブレム。宮部ワールドにはまりこむには、過分な説明や予備知識はいりません。
いやぁ~、発売される日を今か今かと待った甲斐がありました!ほんとうにおいしゅうございました、ご馳走さまでした!
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