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川端康成文学賞受賞作家、最新作! 『逃亡くそたわけ』(2ページ目)

『袋小路の男』で川端康成文学賞を受賞した著者の最新作。躁病で入院中の病院を脱走した花ちゃん。道連れは、名古屋出身、東京オタクの鬱病のなごやん。オヤジ車で九州を南へ南へ。奇妙な逃避行の顛末は?

執筆者:梅村 千恵

■他人から貼られるレッテル。そこから「逃げてはいけない」は正論だけど・・・

 明確な理由を分からず背負った病気や好きだけど大嫌いな故郷。それらから連想して他人や世間が貼るレッテル。そんなものから二人は逃げている。そして、逃げながら、分かっている。
――逃げることは出来ても、逃げ切るなんてしきらんよ――

 花ちゃんは、なごやんに、自分に、そう言葉をぶつける。

 逃げ切れないから、逃げてはいけない、というのは、とても正しい。正論だ。
 でも、逃げて、道に迷って、その道が通行止めになっても、動いていれば、どこかにたどりつくに違いない。そこはもちろん、ゴールじゃないし、楽園でもない。だけど、地獄でもないかもしれない。そして、本作の二人の逃避行がそうであるように、逃げている間も、生きている瞬間瞬間は、それなりにちゃんと脈動しているのだ。
 それでいいんじゃないか。逃げたいときは、逃げ切らないとわかっていても、逃げるのも悪くないんじゃないか――

 自身の置かれた状況から逃げないこと。それは、とても正しい。正論だ。
 だけど、正論だからこそ、空疎に聞こえる、そんな時もある。ありますよね?本作は、そういうときにおすすめのロード・ムヴィーならぬロード・ノベルである。

 それにしても、「ちょっとからかっただけでイタキモチイ顔をする」ナゴヤン、個人的にファンになりました。こういう感じのダメ男に弱い女性は、わりあい多いはず!

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◆「純文学」というと、ちょっぴりとっつきにくそうだけど、実は、もっとも刺激的な作品に出会えるジャンルだと思います。情報チェックは、「恋愛・純文学の作家ページ」で。

文学界新人賞受賞でデビューした著者。第一回目の受賞者は、現東京都都知事のあの方。彼はじめ、芥川賞作家を輩出するので知られる賞です。著者はじめ、こんな受賞者も。

著者の公式サイト『絲山秋子ウェブサイト』活動報告、日記など。群馬に引越しなさったんですね。。。

『サイドカーに犬』で同賞受賞、『猛スピードで母は』で芥川賞受賞の長嶋有。『長嶋有公式サイト』では、ゲーム評論家「ブルボン小林」としての活躍もチェックできます

『壊音 KAI-ON』で同賞を受賞した篠原一。十代での受賞ということで話題になりました。公式ページ『黒猫亭』には映画評なども。
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