■他人から貼られるレッテル。そこから「逃げてはいけない」は正論だけど・・・
明確な理由を分からず背負った病気や好きだけど大嫌いな故郷。それらから連想して他人や世間が貼るレッテル。そんなものから二人は逃げている。そして、逃げながら、分かっている。
――逃げることは出来ても、逃げ切るなんてしきらんよ――
花ちゃんは、なごやんに、自分に、そう言葉をぶつける。
逃げ切れないから、逃げてはいけない、というのは、とても正しい。正論だ。
でも、逃げて、道に迷って、その道が通行止めになっても、動いていれば、どこかにたどりつくに違いない。そこはもちろん、ゴールじゃないし、楽園でもない。だけど、地獄でもないかもしれない。そして、本作の二人の逃避行がそうであるように、逃げている間も、生きている瞬間瞬間は、それなりにちゃんと脈動しているのだ。
それでいいんじゃないか。逃げたいときは、逃げ切らないとわかっていても、逃げるのも悪くないんじゃないか――
自身の置かれた状況から逃げないこと。それは、とても正しい。正論だ。
だけど、正論だからこそ、空疎に聞こえる、そんな時もある。ありますよね?本作は、そういうときにおすすめのロード・ムヴィーならぬロード・ノベルである。
それにしても、「ちょっとからかっただけでイタキモチイ顔をする」ナゴヤン、個人的にファンになりました。こういう感じのダメ男に弱い女性は、わりあい多いはず!
この本を買いたい!
◆「純文学」というと、ちょっぴりとっつきにくそうだけど、実は、もっとも刺激的な作品に出会えるジャンルだと思います。情報チェックは、「恋愛・純文学の作家ページ」で。
文学界新人賞受賞でデビューした著者。第一回目の受賞者は、現東京都都知事のあの方。彼はじめ、芥川賞作家を輩出するので知られる賞です。著者はじめ、こんな受賞者も。
著者の公式サイト『絲山秋子ウェブサイト』活動報告、日記など。群馬に引越しなさったんですね。。。
『サイドカーに犬』で同賞受賞、『猛スピードで母は』で芥川賞受賞の長嶋有。『長嶋有公式サイト』では、ゲーム評論家「ブルボン小林」としての活躍もチェックできます
『壊音 KAI-ON』で同賞を受賞した篠原一。十代での受賞ということで話題になりました。公式ページ『黒猫亭』には映画評なども。
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