■「群れる」ことで、薄まる「生きることのリアリティー」。一人を受け入れて生きることの意義を謳う
また、収められた4つの話は、それぞれに独立した話ではあるが、実は、ひとつのメッセージで貫かれているように思える。そのメッセージは、まさに、キャッチコピーどおり、
「群れて死ぬなら、一人で生きろ」である。
表題作の集団自殺をする人々は言うに及ばず、『スカウトマン・ブルース』に登場する学生サークルあがりの風俗事務所も、“群れること”の不気味さを伝えている。
群れることは、時として、人の感性の触覚のようなものを撓めてしまう。群れることで、死の恐怖も、モラル観も薄まるのだ。群れれば群れるほど、生きることのリアリティーのようなものが薄まるのだ。
そう、マコトが、『伝説の星』に登場する中年の元スターが、『死に至る玩具』の中国娘がカッコイイのは、一人で、生きることのリアリティーを引き受けているからだ。
一人で生きることは、自分の中に閉じこもることではけっしてない。彼らのように、外界と敢然として対峙し、そこで自己を表現しようとすることだ。そして、自分と同じようにそうしている他人を認め、その前提において、つながることだ。
ラストシーンで、マコトは、やっぱり、池袋のウエストゲートパークにいる。一人で。外界に向かって開きながら。
やっぱり、うーむ、カッコイイ。一緒に、ウエストゲートパークに座りたい・・・(どんどんオリコウになっていって、チンピラ度がますます低くなっていくのは少々残念ですが)
サービス精神旺盛な著者のこと、シリーズを読んだことのない人にもちゃんと楽しめるよう、作られています。ぜひ、あなたも、ウエストゲートパークへ。
この本を買いたい!
どんなジャンルのものでも作品にムラがなく、「売れ筋」をハズさない著者。ベストセラーチェックは、こんなサイトで。「ベストセラーをチェック」
◆石田衣良さんに関する情報がチェックできるサイトをピックアップ
ロングインタビューから最新情報まで、充実した内容です。『YAHOO BOOKS 現代感覚の妙手 石田衣良』。
第129回直木賞を受賞した著者。受賞までの遍歴は『直木賞のすべて 受賞作家の群像』でチェックできます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。