文科系オタク女子の鏡(!?)三浦しをんの最新作。昔話をモティーフに語ることの切実さあふれる美しき7編『むかしのはなし』・三浦しをん(著) ・価格:1575円(税込)この本を買いたい!■コミック世代、ゲーム世代から支持を受ける著者が、「昔話」をモティーフに紡ぐ7編の物語 偏愛する漫画の世界に浸り、そこから得た妄想を糧に、就職難という現実に雄雄しく立ち向かう主人公を描いた『格闘する者に○』でデビューした著者。コミック世代、いや、ゲーム世代を代表する書き手の一人であり、そのオタクっぷりを遺憾なく発揮したエッセイでも人気を博している。 きわめて個人的なことだが、デビュー作の主人公の妄想の爆走ぶりや、エッセイに見られる躁状態には、どうもうまく乗れず、これも世代ギャップかと諦めぎみだった。もっと言うなら、限られた層にとってのプチなカリスマなのね、と、少々冷ややかな視線を向けていたのである。だが、本作を読み終わっての感想は、思わずため息。そして、「お、おみそれしました!」。 昨今のゲームやコミックなどのトレンドをキャッチアップできない私の「同志」たちにも、ぜひ、先入観を捨てて、手にとっていただきたい。心からそう願う次第である。 さて、本作。 「かぐや姫」「花咲か爺」「天の羽衣」「桃太郎」など、昔話からモティーフを得た7編の短編が収められている。だが、どの話も、昔話の持つプラグマティックなエッセンスを現代に移し変えたようなものではない。それでは、著者がインスパイアされた昔話のエッセンスとは、7編の物語を貫くものとは、何なのか。12次のページへ