■「等身大の登場人物」が登場する小説のみが「リアル」なのか?読者を挑発する刺激的な一作
この作品の主人公たちは、十代の青年と三十代の女性の「年の差カップル」で、「不倫」だ。だが、読む者が十代であっても、そうでなくても、三十代であっても、そうでなくても、年の差恋愛や不倫を体験したことがあっても、そうでなくても、「そう、そう、この感じ」は味わえるだろう。
そう、この作品の「リアル」は、登場人物の設定に頼っていないのだ。
自分とよく似た、いわゆる「等身大の主人公」が登場する小説のみが、リアリティーのある小説なのではない――
選考委員の斉藤美奈子氏は、「ある意味、ペンネーム以上に大胆不敵」と評されたが、私は、この著者がそう挑発しているように思えてならなかった。
外見はきわめてシンプルなのに、食してみると、ガツンと刺激的--そんな感じの本作。
次作も、何かやってくれそうです、ナオコーラちゃん。目が離せません!
この本を買いたい!
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◆第41回文藝賞受賞の同作。昨今の若手作家台頭の端緒を開いたともいえる賞です◆
山田詠美など、文壇に新風を巻き起こす作家を輩出した文藝賞。綿矢りさを輩出したことで、ますますメジャーに。「河出書房新社 文藝賞」では、3月31日締め切りの第42回応募規定もチェックできます。
綿矢りさと芥川賞を同時受賞した金原ひとみは、すばる文学賞出身。こちらも、3月「集英社 すばる文学賞」も要チェック!
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