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『しゃばけ』が人気の著者、最新作 『ゆめつげ』(2ページ目)

『しゃばけ』でおなじみの著者、本領発揮の「大江戸不思議騒動記」。主人公は、夢に入って過去や未来を見る「夢告」が得意な神官・弓月。行方不明になった大店の後とり息子探しを頼まれるが・・・。

執筆者:梅村 千恵

■脱出行あり、謎解きあり、激動の時代を生きる人々の複雑な思いあり。お楽しみ満載!

キャラクターの魅力で読ませる傾向の強い『しゃばけ』だが、本作は、神社からの脱出行を織り交ぜるなど、サスペンス色が若干前面に出されている。謎の組み立ても、夢による解明と殺人事件の犯人捜しを絡ませるなど、連作短編であった『しゃばけ』よりずっと複雑だ。現代を舞台にしたミステリーも上梓した著者だが、その経験が、本作にも活かされているのかもしれない。

また、謎の真相の後景には、幕末から明治へと向かう時代の中での寺社改革をめぐる、ある思惑を配することで、変化の時に生きる人間の姿と心情を滲ませてある。
結末では、時代の変化に敏感に嗅ぎ取り、それに対処しようとする者の意欲と焦りが、たとえ時代が変わっても変わらないものがあることを信じようとする思いと交錯するのだ。
少々軟派であるが、実は心の奥底に潔さと勇気を秘めている主人公が醸しだす爽やかな読後感とともに、深い余韻が響く結末である。

それにしても、この主人公、この1作で終ってしまうのは、少々もったいない。もしかして、この作品もシリーズ化?? 『しゃばけ』シリーズも、まだ続きそうだし、何かと楽しみである。


◆第13回(2001年)日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビューした著者。こんなマニア受けする作家のほか、『リング』の鈴木光司さんも第2回の優秀賞を受賞しています。ちょっと意外かも。◆

記念すべき第1回大賞受賞の酒見賢一さん。受賞作『後宮小説』は、ベストセラーになり、直木賞にもノミネート。アニメの原作にもなりました。「酒見賢一ファンのページ」には、掲示板などが。

第三回に『バルタザールの遍歴』で大賞を受賞した佐藤亜紀さん。実力者です。彼女が、筒井康孝、小林恭二、堀晃、薄井ゆうじの4氏とともに発起人となっているのが「JAPAN LITERATURE Net」。それにしても、渋い顔ぶれですね。
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