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恋愛のカリスマ作家が本領発揮!? 『間宮兄弟』(2ページ目)

おたくっぽい、むさくるしい、だいたい兄弟二人で住んでいるのが変――まったくモテない間宮兄弟。彼らに“雪解け”はやってくるのか?カリスマ的人気を誇る著者の最新恋愛小説。

執筆者:梅村 千恵

■完結した世界に棲む、孤独で満ちたりた主人公たち。そのあり方に潜む残酷さ。著者は、究極のペシミスト!?

その理由は、彼らが「おたくっぽくて、むさくるしい」からではない。彼らの世界が、彼らが作ったルールで完結しているからである。
兄は、近所まで飯を食べに出かける時も必ずシャワーを浴び、弟は、ソープランドにいった日は、ゲームセンターによって帰る。自分たちのルールを守ることで、彼らの世界の秩序は、常に保たれている。その秩序が、彼らのいる空間と時間の「居心地のよさ」を作っている。だが、こういう「完全な世界」に他人が入っていくのは、かなりキツイ。女性たちにとって 彼らの存在は、おそらく、故郷のように、「遠くにあって思うもの」ではないだろうか。
兄弟にとっても、表出している願望とはまったく逆に、心の底では、彼ら自身が他者の干渉を拒絶しているということになる。 兄弟が「おもしろ地獄」と呼んで愛しているジグザーパズルにたとえるなら、ピースは既に全部揃っているのである。本人たちは、「恋人」というピースが足りないと思っているけれど、そのピースは、実は、いらないもののようにすら思える。彼らは、自分たちの世界に自分たちだけで住む、孤独だが満ち足りた「忘れられた民」なのだ。
そう考えると、この兄弟のありかたは、けっこう哀しくて、残酷ではないか。

この作品に限らず、『神様のボート』も『きらきらひかる』も、著者の作品世界は、もうこれ以上どこにもいけない「世界の果て」を描いているように思える。少なくても、私にとって、江國作品は、美しくて、優しくて、そして残酷であり、著者は、究極のペシミストだ。

江國作品が甘いデザートだと敬遠している左党の方にもぜひ読んでいただきたい。そして、私が感じているような「苦いけどクセになる味わい」を感じる方が一人でもいたら、とても嬉しい。

この本を買いたい!


人恋しい季節、もの思う季節にぴったりなのは、やっぱり、恋のおはなしでしょう。情報チェックは「恋愛・純文学の作家ページ」で。

◆児童文学出身の江國香織。今も、こんな絵本がこんな出版社から刊行されています。◆

『海辺のくま』をはじめ「くま」シリーズは、「BL出版」から刊行。クレイ・カーミッシェルの優しくてこころなごむ絵と内容に江國さんの美しい訳文がぴったりフィット。

奔放でセクシーな母を冷静に見つめる少女を描いた『ジャミバン』は、宇野亜喜絵が妖艶な挿し絵を描いています。これぞ、まさに、大人のための絵本!刊行は、「アートン」から。

『つめたいよるに』に収録された短編が、飯野和好が大胆で素朴なタッチの絵によって新たな生命を得た一冊『桃子』は「旬報社」より刊行。
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