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エンタメ界の硬派にして実力者の最新作 『真夜中の神話』

映画も大ヒット『ホワイトアウト』で大きな話題を呼び、次々とスケール感のある作品を発表してきた著者。最新作は、えっ!吸血鬼?天使の歌声?ちょっと意外だが、実は・・・

執筆者:梅村 千恵


『真夜中の神話』
映画化もされ大ヒットした『ホワイトアウト』の著者の最新作。神話の封印を解く旅の行方は・・・


『真夜中の神話』
・真保裕一(著)
・価格:1700円(税込)

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■吸血鬼伝説、神秘の歌声をもつ少女。ちょっぴりオカルトがかったモティーフだが・・・

『ホワイトアウト』『連鎖』『震源』などでおなじみ、硬質なサスペンス作品で評価の高い真保裕一の最新作。さて、ストーリーは・・・

夫と愛娘を事故で亡くし、失意から立ち直れずにいる晃子。薬学の研究者として順調なキャリアを積み上げていた彼女だが、家族をないがしろにしてきたことが事故を招いたと自らを責め、一線を退く。やがて、研究分野としてはほとんど認知されていないに等しいアニマルセラピーの分野に関心を抱くようになった彼女は、イルカ療法の第一人者がいるというインドネシアに向かうのだった。
ところが、晃子の乗ったインドネシア国内線の航空機が墜落。飛行機から投げ出され、死を覚悟した晃子の耳に届いてきたのは、「天使の歌声」だった。目覚めたとき、晃子は、自分が九死に一生を得、山中の村にいるのに気づく。その村では、一日の終わりに村人たちが集まって聞く少女の歌声こそ、彼女が聞いた「天子の歌声」だったのだ。少女の声に、「癒し」以上の力を感じる晃子。実際、彼女の肉体は、恐るべき速度で回復する。村で起こったことをけっして口外しないと約束させられ近隣の街にもどった晃子は、自分なりの方法で「歌声」の真実をつきとめようと決心する。

一方、同じ街のチャイナタウンでは、胸を刺し貫かれた首なし死体が発見される。その被害者も、かつて晃子と同じ村で生命を救われていたのだ。実は、その村は、吸血鬼の住む村として、恐れられていた。少女の歌声と、吸血鬼伝説はどんな関係があるのか? 殺人は、村の秘密を隠すために行われたのか? 自ら、事件の渦中に飛び込んでいく晃子。彼女が見たものとは?

吸血鬼伝説、神秘の歌声を持つ少女・・・読み始める前は、「社会派」のイメージがある著者にしては、ずいぶんオカルトがかったモティーフではないかといぶかったのだが、一読後、もしかすると、著者の今までの作品の中で、もっとも「社会派」なのではないかと感じた。
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