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浅田版新鮮組異聞、第二弾! 『輪違屋糸里』

『壬生義士伝』に続く、浅田版新鮮組もの。新撰組誕生の瞬間のドラマを独自の視点で描く。男も女も、新撰組マニアも「チャンバラは苦手」な人も、楽しめます。

執筆者:梅村 千恵


『輪違屋糸里』(上・下) 浅田次郎 文藝春秋 各1525円
大河ドラマでブーム、新選組。エンタメ小説の雄・浅田次郎が書くとこうなります。『壬生義士伝』が「男性版」ならこちらは、「女性版」!


『輪違屋糸里』
この本を買いたい!


■浅田版新鮮組異聞第二弾は、芹沢鴨事件にフォーカスした感動大作

若き新撰組隊士、彼らに思いを寄せる島原の遊女・・・この登場人物設定だけで、もう、新撰組好きにはたまらない・・・今年は、大河ドラマの牽引で、何年か一度のが、必ずやってくる「新撰組」ブームの年。いやあ、さすが浅田先生、外しません!『壬生義士伝』に続く、浅田版新鮮組異聞を、しっかり、この時期に刊行。しかも、今回は、芹沢鴨事件のみにスポットをあてた作品。新撰組の興亡をある程度マクロ的な視点で追うTVドラマを意識されたのか、されていないのか、ひとつの事件にフォーカスをするという接眼方式で、これだけの感動大作を書ききるとは、まさに、文壇きってのエンターテイナーの本領発揮である。

■島原の遊女、若き隊士たち。女と男の思いが錯綜し、運命の時へ

芹沢鴨事件といえば、食い詰めた無名道場主であった近藤勇はじめ、有象無象の集まりであった「壬生浪士組」が、「新撰組」になった瞬間でもある。近藤勇一派が、有象無象ではない巨魁を倒し、浪士組を完全掌握したのである。

さて、本編は、芹沢鴨が、遊郭・島原の最高位である太夫、音羽を無礼打ちした事件から幕を開ける。どんな高位の人さえ従う島原の掟を無視した上での狼藉に、壬生と島原に暮らす人々の恐怖と怒りは、頂点に達する。その中でも、音羽の死を激しく哀しみ、芹沢への憎悪を募らせたのが、音羽がかわいがっていた芸妓・糸里だった。だが、糸里は、浪士組の存在そのものを憎む気持ちにはなれない。なぜなら、浪士組の実力者の一人である土方歳三に思いを寄せていたからであった。

一方、浪士組内部では、芹沢派と土方を参謀とする近藤勇派の暗闘が激しさを増していく。
農民の出自ゆえ、武士よりも武士らしくあろうとする近藤勇、土方歳三、自らを悪役という役回りに追い込んでいくしか生き方を知らない芹沢鴨、二派の間で「正義」を貫こうとする永倉新八・・・隊士それぞれの思いとさまざまな政治的策略が入り乱れ、血なまぐさい争いの匂いは、日々一刻一刻と濃くなる。そして、その争いに、糸里はじめ、女たちも巻き込まれていくのだった・・・

気づきました?この作品、『壬生義士伝』と分かりやすい対比をなしてますよね?それは・・・
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