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『葉桜の季節に君を想うということ』 今年の収穫 ミステリー編(2ページ目)

『長い家の殺人』でデビュー、正統派本格から物語性の高い異色作まで、「何かやってくれる」歌野晶午。最新作は、活劇あり、恋愛ありのエンターテイメント性の作品だが、ラストにでっかい仕掛けあり!?

執筆者:梅村 千恵

■タイトル、構成、ディテール・・・ラストで明らかにされる「謎」のために捧げられた「メタ・本格」

 活劇あり、ノワールあり、恋愛ありとサービス満点。風俗産業に時々お世話になりながら、純愛を渇望し、自分に厳しいようで意外に甘い、主人公の人物造形も魅力的。筆致にメリハリがあり、どのエピソードも活き活きとしている。もちろん、「犯人探し」も「トリック」もちゃんと仕掛けられている。
だが、何と言っても、ラストにドカンとくる仕掛けには・・・

 一言で言うと、「やられた!」。

 この仕掛けに関するヒントを言ってしまうと、読む楽しさが激減してしまうので、これ以上の記述はやめよう。だが、タイトルからディテールに至るまで、このトリックのために精緻に計算され尽くされているのである。

 美しく魅力的な「謎」に捧げられた物語を「本格」と定義するなら、この物語は、明らかに「本格」であろう。言ってみれば、作品全体で読者を騙す「メタ・本格」である。

 ともあれ、「騙される」快感を心ゆくまで味わえる一作。既読の人間に意地悪されて、「ネタ」をバラされない限り、楽しめること請け合いである。

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