■タイトル、構成、ディテール・・・ラストで明らかにされる「謎」のために捧げられた「メタ・本格」
活劇あり、ノワールあり、恋愛ありとサービス満点。風俗産業に時々お世話になりながら、純愛を渇望し、自分に厳しいようで意外に甘い、主人公の人物造形も魅力的。筆致にメリハリがあり、どのエピソードも活き活きとしている。もちろん、「犯人探し」も「トリック」もちゃんと仕掛けられている。
だが、何と言っても、ラストにドカンとくる仕掛けには・・・
一言で言うと、「やられた!」。
この仕掛けに関するヒントを言ってしまうと、読む楽しさが激減してしまうので、これ以上の記述はやめよう。だが、タイトルからディテールに至るまで、このトリックのために精緻に計算され尽くされているのである。
美しく魅力的な「謎」に捧げられた物語を「本格」と定義するなら、この物語は、明らかに「本格」であろう。言ってみれば、作品全体で読者を騙す「メタ・本格」である。
ともあれ、「騙される」快感を心ゆくまで味わえる一作。既読の人間に意地悪されて、「ネタ」をバラされない限り、楽しめること請け合いである。
この本を買いたい!
著者もメンバー、本格好きにはお馴染み、「本格ミステリ作家クラブ」のホームページもチェック。
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