講談社「ミステリーランド」初回配本作品
『くらのかみ』小野不由美この本を買いたい!
『透明人間の納屋』島田荘司この本を買いたい!
『子どもの王様』殊能将之この本を買いたい!
■本の復権を目指した「箱入り」の豪華装丁
講談社のジュビナイルシリーズ「ミステリーランド」。その豪華な執筆陣、内容の質の高さに加えて、もう一つ、特筆すべき魅力がある。
それは、「外見」。
書店でこのシリーズを立ち読みでチェックした方は既にご存知だろうが、このシリーズ、三作とも、「箱」入りなのである。ちょっとレトロな雰囲気の筒抜けの箱から出さないと、立ち読みができない。最近、トンとお眼にかからなくなったが、かつて、少なくない数の本が、それなりに豪華な箱に入っていた。特に、明日の日本を担う(?)少年少女たち向けのものは、そういったものが多かったように思える。ほら、「世界名作文学全集」とか、あったじゃないですか。
誕生日などに、そういった本を買ってもらうと、本当に、成長を認めてもらったような気がして、誇らしかったものだ。
だが、現在、書店に並んでいる本のほとんどは、「軽装」である。全集ですら、ソフトカバーだ。できるだけ、安価に、手軽に、ということだろう。
そんな中で、あえて、このシリーズは、「箱入り」という、些か勿体をつけた外観になっているのは、(このシリーズを企画した講談社の名物編集者によると、かなりの努力を傾けて、「箱入り」を実現させたらしい)、本というものに、「手触り」を取り戻そうとういう試みなのだと思う。
「本」というものが、単なる「情報」を媒体するメディアであるならば、「感触」などどうでもいい。しかし、もしそうなら、本以上に優れたメディアはいくらでもあるし、これからも出現するだろう。しかし、本が与えてくれる喜びは、他のものではそう簡単に代替できない。そして、その喜びは、外観に触れた時の手触り、そして、箱から出してページを開く、という行為とともにある。
私も含め、少なからぬ数の人々にとって、本は、メディア以上のものである。このシリーズを手にとっていると、改めて、そのことを実感させられる。
このシリーズは、いわば、本のルネッサンスを目指したものなのである。