『しょっぱいドライブ』

大道珠貴 文藝春秋 1238円
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■冴えない三十女と世間から笑いものにされている初老男。奇妙な二人の関係とは?

少々遅ればせながら、芥川賞受賞作のご紹介。

寂れた漁師町の冴えない海辺を一台の車がゆく。車中のラジオからは「小生、この歳まで、じねんじょ掘りだけはやめられません・・・」。助手席の背には、木の玉が連なってできたカバー。イケてないこと、おびただしい。
で、やはり、というべきか、乗っているカップルも、イケてない。
助手先に座る「わたし」は、三十代の独身女性。高校卒業してかまぼこ工場に勤め、地方の劇団の勘違い男優に熱をあげ、「目が合うとか、汗の匂いを嗅ぐとかできればいいのだ。あわよくばセックスとやらもやってみたい」と追っかけになり、劇団員の真似事をして2回寝たけど、それ以降は相手にもされず、兄の嫁に「暗さがしみ出てる」と陰口を叩かれている女。

運転席に座る「九十九さん」は、頼まれててもいないのに人をホイホイ援助し、その「ホイホイ」さゆえに、軽蔑され、少々うとまれている初老男。「わたし」の飲んだくれの父親にも「大人になってもカツアゲされつづけている」かのように気軽に金を貸し、父が死んだ後は、その父をさらにスケールの小さくしたような兄やその妻に蔑視され、おまけに自分の女房は、肉体派の漁師に寝取られ、息子までがそちらになついているという有様。

まあ、こうして紹介していても、つくづく「イケてない」。そこを通り越して、まさに「しょっぱい」お二人が、ひょんなことから肉体関係になる。ドライブは、この歳の差カップルにとって一応デートなのであるが、映画館もないような町だから、することといえば、冴えない海辺をぐるぐる回るだけ。本当に、読めば読むほど、「しょっぱい」お話なのである。

しかし、この「しょっぱさ」、一筋縄ではいかない。奇妙に後をひくのだ。