『半落ち』

横山秀夫 講談社 1600円
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■アルツハイマー病の妻を手にかけた警察官。犯行の事実をすべて認めた男が、ただ一つ隠し通そうとしたこととは?

「殺人です。女房を殺したと言っています」一本の電話がW県警を揺るがす。
自首してきたのは、梶聡一郎警部――書道の達人で、温厚、生真面目。取り調べに当たった県警本部捜査官・志木和正を前に、梶は犯行事実を完全に認め、供述をはじめる。白血病で息子を亡くし、アルツハイマー病と診断された妻と二人暮らし。自身が壊れていくことに絶望する妻に壊れて扼殺・・・。
警察官の犯行ということで県警本部は緊張するが、事件そのもののは 犯人の自首、自供により“解決”したはずだった。ところが、ただ一点、謎が残る。それは、犯行から自首までの二日間の梶の足取り。そのことに関してのみ、なぜか堅く口と心を閉ざす梶。彼はどこで何をしていたのか? 警察官として人一倍強い職業的倫理感と責任感を有する彼が、なぜ自死を選ばなかったのか?
「あと一年だけ生きたかった」・・・梶と同じく50歳を目前にしている志木は、梶の心の内の真実に迫ろうと決意する。「梶聡一郎は、“半落ち”」――。

『陰の季節』で松本清張賞受賞、『動機』で日本推理作家協会賞短篇部門賞受賞の著者初の長編ミステリー。著者は、捜査官・志木にこう語らせる。「取り調べは一冊の本だ。被疑者はその本の主人公なのだ」--梶聡一郎という男を主人公にした物語の全容が明かされた時、すなわち、彼が死よりも辛い屈辱に耐えても守ろうと決意したある“もの”の正体が明かされた時、大きな感動が読む者を包むだろう。

警察やマスコミの活き活きとした描写、骨太にして清冽な読後感。初の長編とは思えないほどの完成度である。
だが、この作品の魅力はそれだけではない。