『イントゥ・ザ・ワイルド』
『イントゥ・ザ・ワイルド』 1992年の夏、アメリカ最北部アラスカ州の荒野でクリストファー・マッカンドレスという若者の死体が発見された。この出来事をマスコミが大々的に報じ、全米の多くの人々の関心を引いたのは、彼の死があまりにも謎めいていたからだった。 東海岸の裕福な家庭で育ち、優秀な成績で大学を卒業。そんな人生のエリートコースを約束されていた若者(エミール・ハーシュ)が、ある日突然すべてを捨てて旅立ち、2年間のさすらいの果てに、アラスカで早すぎる最期を迎えたのだ。この誰もが「なぜ?」と疑問を抱く大いなる謎の解明に挑んだのが、ジャーナリストにして登山家のジョン・クラカワー。彼が綿密な追跡取材を基に発表したノンフィクション「荒野へ」は一躍ベストセラーとなり、センセーショナルな反響を呼び起こした。 ショーン・ペン監督の最高傑作「荒野へ」の読者の中には『ミスティック・リバー』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたアメリカ屈指の名優ショーン・ペンもいた。並々ならぬ情熱をもち、映画化権獲得に10年近い年月を費やし、ついに入魂の一作を完成させた。1991年に『インディアン・ランナー』で監督デビューをはたしたショーン・ペン。そのあとも『クロッシング・ガード』、『プレッジ』と力量を証明してきた。そうした流れをくむ、まさしくショーン・ペンらしい作品になっている。 長尺もまったく苦にならない。しかも、傍観者として若者を見守っているつもりが、いつのまにか……。まるでハル・ホルブルックが演じたフランツ氏の気分になっている。いきいきと自然体なさまを見せるエミール・ハーシュ。いろいろな意味で、あらためて監督ペンの手腕を見せつけられた。 |