最高傑作とされた『うつせみ』を超える、絶対的な愛の姿とは、はたして……。 ヒロインのセヒ(パク・チヨン)は、恋人のジウ(ハ・ジョンウ)に時が経てば飽られてしまう、という愛するが故の不安を日に日に募らせるようになっていた。整形手術で顔を変える決心をし、ジウの前から、突然無言で去るのだった。しばらくしてスェヒ(ソン・ヒョナ)という女性が、ジウの前に現れる。それは……。 ――まずは、本作の着想を教えてください。 キム・ギドク監督:韓国には整形手術によって、新しい自分を手に入れようとする人がたくさんいます。整形によって自信を得て、新しい人生を始める人たちも確かにいます。しかし私には、人々が整形手術を受けた後に、自分の独自の特徴やアイデンティティについて、混乱しはじめるように思えるのです。私は、このような事象を、愛についてのひとつのイメージとして、描き出したかったのです。 ―― 主人公が話さず、周囲の人が話す手法をつかうのは? キム・ギドク監督:誰もそういった手法を使っていないので(笑い)。その手法をとることによって、主人公のことを、より深く説明できると思うんです。主人公があまりにも饒舌にしゃべりすぎると、時として魅力がなくなったり、神秘性が薄れてしまったりします。他の人に話させることによって、主人公の魅力が際立つ効果がある気がします。例えば、わたしがどこかに行ったとして、そこで「自分って本当にいい人なんですよ」って言うよりも、隣に居る人が「この人は本当にいい人ですよ」と言ってくれた方が効果的ですよね。そして、そうすることで「本心」を言い当てられる気がします。 ―― その誰もやっていない手法を使おうと思ったのは、どの時点ですか? キム・ギドク監督:作品でいうと4本目の『魚と寝る女』あたりから、ちょっと台詞(せりふ)を少なくしてみて、『悪い男』では男性主人公を話せない役にしました。そういう風にして、周りの人に主人公を語らせたところ「あー、これはなかなかいいんじゃないか」と思いはじめました。 ―― 今後もその手法で描かれますか? キム・ギドク監督:これからもそういった手法を絶対にとるんだ!ということを決めているわけでなく、映画のテーマにあわせて、そういう手法がいいなと思えば使うと思います。ちなみに新作の『BREATH(=息)』(原題)は、台詞がある部分とない部分があります。 ――整形に対するアンチテーゼの意味はありますか? キム・ギドク監督:昨年、韓国で整形を題材にした映画が、去年3本つくられました。『絶対の愛』は、整形を描いていますが、それは直接的なテーマではなくて、あくまでも「愛」を描きたかったのです。つまり「顔が変わったら愛は変わるのだろうか?」あるいは「愛というものは永遠のものだろうか」問いかけをしたいので、題材に入れました。ですので、アンチテーゼだとか、整形を擁護するという、どちらでもないです。 |
『絶対の愛』[TIME] © 2006 KIM Ki-duk Film. All rights reserved. ※2/24~3/16 レトロスペクティヴ「スーパー・ギドク・マンダラ」ユーロスペースにて開催 |
※著作権は撮影者・南樹里及びオールアバウトに帰属します。 ※記事・画像の使用は、版権を有する映画配給会社等の許諾を得て掲載しています。 ※記事・画像の使用・転載は、営利・非営利を問わず禁止です。 ※リンクは、大歓迎です。詳細は右上の▲リンクをご覧下さい。 ※Photos(c) Julie Minami - All Rights Reserved. Use is restricted to this website in promotion of "TIME" |