映画/映画関連情報

虐殺の史実『アララトの聖母』

10月4日~公開。アルメニア人画家、アーシル・ゴーキーが描いた「芸術家と母親」の絵画を中心に民族の悲劇、親子の絆、人の情を描いたアトム・エゴヤン監督作。

執筆者:南 樹里

『アララトの聖母』←クリックで公式サイトへ 10月4日、シャンテ シネ他にて全国順次ロードショー エドワード・サロヤン(シャルル・アズナブール)は、著名なアルメニア人の映画作家。長い間あたためていた企画―1915年、聖なる山アララトの麓で起きたアルメニア人虐殺の史実を実現するために撮影でカナダのトロントへやって来る。柘榴(ザクロ)と共に…。母さんたとえ僕たちの故郷が滅ぼされてもあなたの手のぬくもりは一生忘れない。アララトの聖母 その映画に参加することとなったカナダに住む青年、ラフィ(デヴィッド・アルペイ)と、その母、アニ(アーシニー・カンジャン)。きっかけは、アニが美術史家で、アルメニアの画家アーシル・ゴーキー(サイモン・アブカリアン)を研究しており、*1絵画「芸術家と母親」に基づく執筆、出版、講演と一人者であったことから、脚本家のルーベン(エリック・ボゴシアン)から顧問にと依頼されたためだった。「芸術家と母親」を描いたゴーキーは、虐殺で母をなくしたあと、アメリカに移住し、一生その苦しみから逃れられず若くして亡くなっている。18歳のラフィは、サロヤンの現場で雑用係として働いていた。映画の中で非道に振舞うトルコ人総督、アリの演技に憎しみをかきたてられ、アルメニアの自由を求めて射殺された父の死に疑問を持ち「父は何のために生き、何のために死んでいったのか」を確かめるために、真実を求めてアララトへ旅立つ。
哀しみの歴史の中で失われた母と子の絆が、時代を越えて再びよみがえる。
20世紀の歴史上、いまなおトルコが事実として認めようとしない聖なる山アララトの麓で起きたアルメニア人の虐殺。その史実にスポットを当てた映画を作ろうと決断したエゴヤン監督は、「なぜ虐殺が事実と認められないのか、なぜその拒絶は今も続いているのか、そして拒絶を続けることがどんな結果を生むのかという問題を、すべてこの映画で描かなくてはならなかった」と語る。アルメニアは、監督自身のルーツでもあるそうだ。母国が永遠に失われたことを物語るように、「芸術家と母親」のキャンバスから削りとられた母の手。そこに虐殺の傷痕の深さを感じ取ったエゴヤン監督は、同じように過去のトラウマを持ち、心が離ればなれになった現代の親子のエピソードを通して、失われた絆の再生を試みていく。
*1:ニューヨークのホイットニー美術館に所蔵Arshile Gorky's "The Artist and his Mother
初日プレゼント(シャンテシネにて)先着50名様に”ローズヒップ・オイル”(アルメニア共和国産)をプレゼント! 提供:日本アララット(株)
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