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多彩な音楽も楽しい、爽快な青春映画 もう見た?『ベッカムに恋して』

イギリスを舞台にインド系のヒロインがサッカーを通して成長していく物語。いろんな魅力が混在していて、極上の元気がもらえる!気軽に楽しめるハッピーでラブリーな映画だ。

執筆者:All About 編集部

文章:小川 みどり(元All About Japan「エンターテインメント」チャネルプロデューサー)


有名サッカー選手に憧れるミーハーな女の子の話ではない。弱小サッカーチームが強くなっていくという青春スポーツものとも違う。「ベッカムに恋して」というタイトルを聞いて、このような固定観念を抱いた人は私の周辺でも少なくなかった。「”がんばれベアーズ”みたいな話なら、興味がないな」と。もったいない話だ。

ひと言では説明しにくい作品である。いろんな要素が混ざりあって独自の味わいを作り出した、”食べる人を不思議なパワーで元気づけてくれる、おいしいインドカレーのような作品”などとたとえたら、余計、意味不明だと食わず嫌いを増やしてしまうかもしれない。そこで、作品の魅力的な4つの要素について、感想をまとめてみた。(記事の最後に劇場鑑賞券のプレゼント情報があります)

■大好きなサッカーを思う存分プレーすることで、
■ヒロインがどんどん美しくなって、輝いていく。
■エキゾチックで、健康的な魅力に注目。


ヒロインはイギリスで暮らす18歳のインド系の女の子、ジェス。サッカーが大好きで、ベッカムのようになりたいと男の子たちに混ざってプレーに興じている。そんな彼女にジョギング中のジュールが目をとめる。地元の女子サッカーチームでエースストライカーを務めるジュールは、ジェスの才能に惹かれるものを感じたのだ。ジュールはジェスをチームに勧誘するが、彼女は即答できない。実はインドの家庭は「女性がスポーツをするなんてもってのほか」という伝統的な価値観に支配されており、ジェスの両親は娘がベッカムのポスターを部屋に飾ることすらよく思っていないのだ。インドも家族も愛しているが、サッカーへの思いも断ち切ることができないジェスは、その間で揺れながら、友情、恋愛、家族愛を育み、サッカーへの情熱を結実させていく。

厳格な家庭で「女は女らしく」としつけられていることに窮屈さを覚え、もっと自由に自分を表現したいと願っていたジェスだが、サッカーチームに入る前の彼女は、ひっつめ髪で、どことなく中途半端な表情をしていた。それが、サッカーを本格的に始めたころから、劇的な変化を遂げていく。いくつもの堅い殻が、ジェスの本来の魅力を覆い隠していた。それはインド系家庭の価値観だけでなく、彼女自身のコンプレックス----彼女が人前で短パンを履かないのには理由があった----にも起因していたことが判明する。そこから抜け出せない彼女に、コーチのジョーはやさしく、そして毅然とした態度で諭すのだ。「それは少しも恥ずかしいことじゃないよ」。ジェスはうれしそうに短パンをはくと、チームの輪の中に元気よく走りだしていく。殻は破られ、コーチのジョーやチームメートによって、サッカーの才能を引き出されていったジェスは、日ごとに輝きを増していく。

ジェス役のパーミンダ・ナーグラがいい。ストーリーが進むにつれて、どんどんキュートな表情を見せるようになり、凛々しく、美しく、見事なくらい鮮やかに変わっていくのだ。恋を知り、束ねていた髪をほどき、選手としてではなく、一人の女性としてジョーの前に佇む彼女の艶やかな笑顔。インド系のエキゾチックで、神々しい美しさがイギリス映画の中で、異彩を放つ。インド映画で、インド人の女優が主役をつとめるのではなく、イギリスを舞台にした青春映画で、インド系少女がヒロインを演じるという設定にしたところにこの映画のおもしろさがある。


異文化混在のストーリーと音楽。
■カルチャーギャップを感じながらも、
■取り合わせの妙を楽しむ


監督のグリンダ・チャーダは、ケニア生まれ、イギリス育ちのインド系の女性。実体験に基づく”異民族の共存”といったテーマの映画作品を過去に2本撮っている。時に難解な表現になりやすいこのテーマを、今回はあまり前面には出さず、少女の成長物語の背景として描いたことで、イギリスの”異民族共存”の現状をさりげなく見せていた。単民族国家の日本人には、イメージしにくいテーマであるが、欧米に暮らすマイノリテイーと呼ばれる人たちは、今もいわれのない差別や、偏見に傷つけられている。人種差別、異民族間の価値観のギャップ、欧米と大きく異なるインド系の結婚式の独自性など、日本の観客には初めて知るものも少なくないだろう。

ストーリー同様、音楽にもさまざまな文化が混在されている。インディ・ポップやバングラビートが大音量でガンガン流されたかと思うと、70年代ソウル、UKポップス、プッチーニのオペラ、ロック、そしてパキスタンの古典声楽家の歌が次々に聞こえてきて、ストーリーを盛り立てるのだ。場面に自然にフィットしたBGMは効果的で、ごったまぜといった違和感はない。むしろ、意外な取り合わせの楽しさがある。マサラ・ムービー好きにはうれしいノリ。そして音楽にはあまり詳しくないという人も、映画を多彩に飾るその存在に「初めてサントラ盤を買っちゃいました」ということになるかもしれない。

公式サイトでその音楽の一部(3曲)を聴くことができるので、まずはトップ画面をクリック

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