テクノポップ/フューチャーポップ

近未来対談~大人のための相対性理論(12ページ目)

『ハイファイ新書』がオリコン7位を記録した、ポストYouTube時代のポップ・マエストロ・・・相対性理論について助手、研究生、小悪魔(新キャラ登場)と共に分析してみました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

ヘタウマ論議

先生:
相対性理論はヘタウマサウンドかという質問についてはどうでしょうか?

小悪魔:
あのう、全然ヘタウマではない気が・・・

先生:
“ヘタウマ”って、物議を醸すみたいですね。僕に中では、ヘタの部分は演奏よりもヴォーカルですね。ウィスパー系というのもそうですが、先ほども言いました「おはようオーパーツ」とかでの特に男性ヴォーカル(笑)。ヘタウマというのは個人的尺度の問題ですが、どちらにしてもチャーミングです。

研究生:
ヘタウマ(に聴こえてしまう)っぽいのは、『シフォン主義』時点での話かなーと。 しかし、インディーからの一発目があのサウンドで、ジャケも歌詞もタイトルも?マークの連発、という特殊な状況。ヘタウマだと印象を抱いて当たり前だとも思います。相対性理論自身もそのようなイメージ展開を望んでいた節は感じられますし。『ハイファイ新書』のジャケもヘタウマサウンドっぽいデザインですものね。

小悪魔:
例えばわたし今回のアルバムでは「テレ東」が相当大好き過ぎて死にそうなんですが、ネオアコ・ギターポップ、渋谷系、とてもエモーショナルなんですよね。 同時にポストロックなハイハットとかが入ってる「地獄先生」。ノーウェイヴな感じもしますね。

このバンド、わたしとメンバーが多分同年代なのですが(ヴォーカルのやくしまるえつこちゃんなんてわたしと同じ美大なんですよ。しかもデザイン科ってとこも一緒。)、多分通って来た音楽、一緒だと思います。一緒って前提で話しますが渋谷系から入ってネオアコ、ギターポップ、ボサノバ、ジャズ、ダブも入ってますね。

「ふしぎデカルト」、この曲は研究生さんもおっしゃってるティンパンアレーの流れも感じます。

「四角革命」は完全にポストロックですね。今、日本でポストロックの最高峰といえばToeやmouse on the keysになると思うんですが、音の深みから言えば全然負けてない、というかむしろ勝っています。なぜなら、なぜか全く飽きないから。何度聴いても。

研究生:
彼らの音を聴いていると、僕にはスタジオでのリハ風景が目に浮かびます。ステージで何度も演奏され、それをまた何度も練り直して、さらに音源制作用にまた練り直して・・・。それだけ丹念に仕上げられた楽曲の数々だと感じています。特にアルバムの楽曲から感じますね。

ザクッと録っているようなシングルにしても、「LOVEずっきゅん」のキメの部分の楽器の絡み方などはかなりややこしい。あれを録音するには、各人が楽曲をきちんと咀嚼しておかないと難しそうです。音質がロウなので、バラけた演奏に聴こえますが・・・。そしてあれをクリアーな音で録ってしまうと、まんま中期~後期ナンバーガールになってしまうような気もします。 デビューということもあり、あえて「初期衝動っぽく」だったのかもしれません(ま、それも初期ナンバーガールっぽいですが…)。

(この後、小悪魔と研究生は何故か「サイゾー」の話で盛り上がる)

先生:
最後に綺麗に締めましょう。
相対性理論というバンド名、意外と的確に彼らの意図を表したものかもしれませんね。相対性理論は、“時空連続体の歪み”がその説明根拠となっていますが、彼らの音楽というのも“歪み”の結果じゃないのかと、考えすぎな僕は思ってしまいます。結果、ロック、ポップ、歌謡曲とか既存のジャンルが、聴き手の感性でどうにでも解釈されてしまう。今後、どんな歪みが生まれるか楽しみです。
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