レコハンをする際、アーティスト買い、ジャケ買い、レーベル買い、ジャンル買いといろいろありますが、プロデューサー買いをする事があります。プロデューサーというのは、本来は裏方さんであるわけですが、個性の強いプロデューサーの場合、時にはアーティストの意向を超えた次元でプロデューサーの個性がレコードに現れます。そういう自我の強いプロデューサーがいいプロデューサーかは別として、その個性が好きならファンとしては楽しいわけです。今回始まったプロデューサー列伝では、そういったプロデューサーに焦点を当てていきます。

第1回は、デヴィッド・モーション(David Motion)。ロンドン王立音楽学院でピアノと作曲を履修したエンジニア上がりのプロデューサーでイギリス人。得意分野は、勝手にそう呼んでいるエレアコ。エレクトロとアコースティック(ネオアコ)が絶妙に組み合わさった80年代中期ごろからのメロディアスなサウンド・スタイル。今後の列伝でも紹介したいと思いますが、New Musikのトニー・マンスフィールドの継承者とも言える存在。

デヴィッド・モーションは、アーティストとしてポップスターを目指していた時期もあり、1980年初頭にクラフトワーク、YMO、初期ヒューマン・リーグなどに影響を受けたテクノポップ・バンド、ホーム・サーヴィス(Home Service←同名フォーク系バンドもあるので注意)のメンバーでした。確認できたリリース(全てシングル)は以下。

『Thin Hours』(1980年)
『Wake Up』(198?年)
両方ともCrystal Groove Recordsという自らのインディー・レーベルより。

『Only Men Falls In Love』(1982年)
Beggars Banquet傘下のCachalot/Situation 2からリリースされた、この12インチ・シングルしか持っていませんが、クラフトワーク meets バグルズのような、まさにテクノポップと言えるタイトル曲が3ヴァージョン入っています。デヴィッド・フレザー(David Fraser)とのデュオのようで、モーションが無機質に歌っています。

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この日本独自編集盤『Strawberry Switchblade(ふたりのイエスタディ+9』(1997年)がリリースされているのも、ストロベリー・スウィッチブレイドが日本で、特別に愛されている証でしょう。ロリゴスのお手本とも言えるグラスゴー出身の元パンク少女、ジル・ブライスンとローズ・マクドゥールの二人。僕の記事にもよく登場します。デヴィッド・モーションのプロデュース代表作と言えるシングル『Since Yesterday(ふたりのイエスタディ)』(1985年)は、イギリスで5位、日本でもアルバムは当時39位。この二人は、ZooレーベルやKFLのビル・ドラモンドがA&Rをやっており、最初のインディー・シングル『Trees And Flowers』(1983年)は、ロディ・フレイム(アズテック・カメラ)、マーク・ベッドフォード(マッドネス)、ニッキー・ホランド(ファン・ボーイ・スリー)という凄いバックでレコーディングされています。サウンド的にはもろネオアコ。しかし、「ふたりのイエスタディ」では、デヴィッド・モーションのマジックによって過剰とも言えるキラキラ・エレクトロ・サウンドへと変貌。しかし、この頭に焼き付いてしまうアレンジは、知能犯です。

1985年に日本のみで『12" Album』がリリースされていますが、これは現在、CommuniqueというカナダのレーベルからCDとして1995年にリリースされています。7曲の内、ほとんどは日本の編集盤に収録されていますが、「Let Her Go'」と「Who Knows What Love Is?(愛の疑問)」のExtended Mixは、このCDのみで聴けます。なお、「愛の疑問」はPhil Thornalleyのプロデュースですが、未発表のデヴィッド・モーションのヴァージョンもあるらしいです。